おだやかな陽ざしの中,元気に飛び戻ってくるミツバチの羽音を,巣箱のそばで聞いたことがありますか? ミツバチやその他のハナバチ類は,日本はもとより世界の多様な自然の中で,その環境を保全し,人々の暮らしを豊かにする働きを担っています.
Harmony on Diversities  いろいろな植物と動物が,本来のいき方をつづけ,豊かに持続的に,響きあいながら命をつないでいける環境.ミツバチもそんな環境を求めています.
ヒトとの関わりがどの昆虫よりも長く多様な,ミツバチとその養蜂について考えてみましょう.

榎本 ひとみ

プロフィール: アジア養蜂研究協会(AAA)設立時より21年間事務局コーディネーターを務め,アジア各国(オセアニア,中東を含む)で1994年より隔年開催された大会の準備などで,各国関係者と交流,多様な養蜂事情を学んだ.現在は役員.またAAA会報「Bees for Development Journal」や玉川大学ミツバチ科学研究センター発行の季刊誌「ミツバチ科学」などを通じて,欧米の関係組織とも交流,国際養蜂協会連合(APIMOMDIA)国際養蜂会議に数回出展,参加した.


ミツバチは水も巣に運び込む その2

水は巣の中で何通りかに使われます.はじめに巣の温度管理と水について.外勤蜂が水資源を探しに出て,良い水を見つけたら蜜胃に貯めて巣に戻ります.巣内で水の需要が大きいときは,内勤蜂がすぐに水を持ち帰った外勤蜂から口移しで水を受け取ります.空身になった水採集蜂は高い需要に応えようと,再び水源へ急ぎます.反対に,水をほしがる内勤蜂がなかなか現れないときは,巣内で水の需要が小さいのだと理解して,水採集をやめるでしょう.

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ミツバチは水も巣に運び込む その1

 働き蜂が日齢を加え,採餌を担当する外勤蜂になったときに,巣に運び込むものは4種あります.ハチミツの素である花蜜,ミツバチの成長と健康に不可欠な花粉,巣内の衛生を保ち,巣を補強するプロポリス,それに水です.花粉とプロポリスは後ろ脚の花粉かごにまとめて運び,花蜜と水は口吻で吸い込み蜜胃に貯めて帰ります.

 花蜜,花粉,プロポリスに比べると目立ちにくいのですが,ミツバチの暮らしに水が不可欠なことは,ほかの生き物の場合と同じです.それにミツバチのユニークな暮らし方ゆえの,特徴ある使い方もしています.

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Honey + matcha

 今やあらゆる食べ物・飲み物に抹茶味が登場していますね。アメリカのナショナルハニーボードが、matcha/抹茶を解説しました。米国ではまださほどなじみがありませんが、健康にとてもよいという切り札を持っての登場です。コロナ禍で人々が健康に大きな関心を持つ日々、ハチミツも砂糖より健康によいと選ばれています。Honey + matchaでヘルシーに!抹茶についてちょっと、振り返ってみましょう。

 写真はタイのチェンライで展示された健康増進をうたうミツバチ生産物製品。抹茶入り新製品も出てきそうですね。

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ミツバチはどうやってハチミツをつくるのか その2

  一つの貯蜜巣房を花蜜で一杯にするまでには,花蜜採餌蜂は何回も花と巣を往復しなければなりません.

  巣房に花蜜が貯められると,巣の中で働くもう少し若い蜂が羽を動かして空気の流れを起こし,花蜜中の水分を蒸発させて,蜜の濃縮を進めます.一般にハチミツは花蜜より75%濃度が濃くなっていますから,巣箱の中でミツバチはかなりの水分を飛ばすために働き続けているのです.

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ミツバチはどうやってハチミツをつくるのか その1

ミツバチはどうやってハチミツをつくるのか,皆さんご存じですね.でもちょっとこのまとめもご覧ください.科学を分かりやすく解説する,アメリカのブルースカイサイエンスというサイトの記事が,ミツバチ雑誌のニュースメールで紹介されました.コロナ対策で子ども達が自宅でネット経由の授業を受け,課題の答えもウェブ上で探しているとき,強い見方になる良質な情報サイトのようです.

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今,アメリカでもっとも好まれる甘味料はハチミツです その2

 2020年にナショナルハニーボード(NHB)は需要喚起の方策として,ハチミツがたどるユニークな道筋の紹介に力を入れました.ハチミツが自然の中で造られること,ミツバチは私たちの地球の生態を維持し,私たちに必要な食糧を生産するのに不可欠な役割をもつこと.養蜂家はミツバチと大地とを守るための世話役であること.

 この物語を伝え理解を深めるために養蜂をたたえるビデオ作品が制作されました.

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今,アメリカでもっとも好まれる甘味料はハチミツです その1

速報 ハチミツが白砂糖を抜いて,アメリカで最も好まれる甘味料になりました.ハチミツは健康に良く,自然な,基本的調理素材として認識されて,先例がないほどの強い需要が出ています.

 米国のナショナルハニーボード/ハチミツ全国委員会(NHB)が2020年の年間報告でこの快挙を伝えました.NHBは消費者にハチミツの利点とその使い方を,学術的裏付けのある情報や市場調査と販売促進プログラムをつうじて伝えることを目的に,ハチミツ関連企業が設立した農業振興団体です.

CATCH THE BUZZ  MARCH 16, 2021より

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ミツバチの生物時計  その2

  働き蜂の日齢分業はつづきます.やがて体内でロウ腺が発達すると巣づくりに参加して巣の隅々にも足を運ぶように.さらにやや明るくて寒い巣門に近いあたりにまで行動範囲を広げ,内勤蜂として外から運び込まれる花粉や花蜜を受け取り,巣房に貯蔵.花蜜は濃縮してハチミツを造ります.

  扇風係になれば巣内の温度調節やハチミツ濃縮のため,飛ばずに巣門付近で羽を動かして換気にいそしむでしょう.また門番は巣仲間ではないミツバチが侵入しないように,巣門で内部に入ろうとするミツバチをチェックします.

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ミツバチの生物時計 その1

  社会性昆虫であるセイヨウミツバチの生物時計は羽化直後には機能しておらず,徐々に発達していくが,同じハナバチでも単独で生活する種類の蜂(Osmia bicornisツツハナバチの仲間)は羽化した時点で,時間をしっかり把握しているとドイツ ビュルツブルグ大学の研究者が報告しました(Front. Cell Dev. Biol., 12 November 2020).アリや人間も出生時には備えていない生物時計を,生長するうちにしだいに確立します.なぜこのような違いがあるのでしょう.

 

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ハチミツは咳や風邪に良く効くと確認 その3

ではどのハチミツが良く効くのだろうなどとおかんがえですか.ハチミツは天然物であり,蜂群が周囲の環境にある植物資源から,そのときに自分たちが求めている条件にあう花蜜を集めます.近くにニーズにあう優良な蜜源があれば,花蜜採餌係の働き蜂が多くの仲間をダンスなどで誘って,その蜜を大量に持ち帰るでしょうが,他の種の花にむかう採餌蜂も皆無ではありません.一つの蜂場に置かれたいくつかの巣箱から同時期に採蜜したら,それぞれの成分は似ていても全く同じにはならないでしょう.

写真は同じくアブダビにあったサウジアラビアの有名な高級ナツメの店で.ギフトアイテムとしてハチミツも格調高く並んでいました.左からレモンとボダイジュのハチミツ.右の2本はハーブ入りハチミツで,アラブ産とは色だけでなく,傾向がかなり違いそう.

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ハチミツは咳や風邪に良く効くと確認 その2

ハチミツが子どもの咳治療に有効かどうかに注目した総合的な統計調査はこれ以前にも行われていました.一方,今回の研究は,子どもに限らず,あらゆる種類の患者の臨床研究データを総合的に解析,その結果を初めて明らかにし,とくにハチミツがほかのよく使われる処方薬と比べて,上気道感染症の治療効果が高いかどうかの判定に焦点を当てていたのです.

写真はUAE アブダビのレバノン系食料品店にあったハチミツ.イエメンの有名な産地の名前が書いてあります.中東の主な蜜源から取れるハチミツは色の濃いものが多いようです.

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ハチミツは咳や風邪に良く効くと確認 その1

のどが痛いとき,軽い咳が出るとき,ハチミツ入りの温かい飲み物は良いですね.ハチミツに抗菌性があることは,知られています.昨年オックスフォード大学で行われた大量の医学データを再調査する研究から,ハチミツが市販の風邪薬などよりも,咳や風邪の症状緩和に効果的であることが確かめられました.

写真はカナダ ケベック州の養蜂場で行われた試食会の様子です.この周辺地域でこの養蜂場の蜂が集め,この建物内で瓶詰された季節ごとに違う数種のハチミツが用意されていました.

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スズメバチ騒動 その4

 ワシントン州農業省(WSDA) オオスズメバチ対策チームは派手な報道後,関心を持つ人が不用意にオオスズメバチを刺激することを懸念して,注意書きをだしました.日本の専門家小野正人先生があげている注意事項もここに加えておきます.

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北米オオスズメバチ騒動 その3 

英国Bee Craft 誌12月号が伝える北米オオスズメバチ騒動より引用

 米国の昆虫学者等は2020年10月24日に初めて,オオスズメバチを見つけ,その巣を探し出し,破壊するという任務を達成した.未来的な装備で身を守るチームの先端技術を取り入れた周到な準備がこの成果をもたらした.

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北米オオスズメバチ騒動  その2

  米国西海岸ワシントン州では,農業局(WSDA)の昆虫学者達が2019年12月以降,数個体のオオスズメバチをカナダと国境を接するワットコム郡内で確認していました.越冬した新女王が巣を構え,働き蜂を増やしている危険があるので,州民の協力も得て,スズメバチを誘引するトラップ(わな)を各地に多数設置,スズメバチを呼び寄せ,その周囲にあるはずの営巣場所を何週間も熱心に捜索しました.しかしオオスズメバチがスズメバチ類では世界最大サイズであっても,その巣を見つけるのはかなり困難.その巣は土中や木の洞に作られることが多いからです.

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北米オオスズメバチ騒動 その1

 今年11月にアメリカのマスコミは「殺人スズメバチ」がアジアから侵入したと,センセーショナルに報道しました.この騒ぎの原因,オオスズメバチ(英名 Asian giant hornet, 学名Vespa mandarinia)は世界最大のスズメバチ種で,もともと温帯,熱帯東アジアの山岳地と森林地に生息しています.日本にも分布,あなどれない危険な昆虫であることは,以前から知られています.

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アーモンドとミツバチ その3 

最新研究から二十日大根やカラシナの主根から土壌中の線虫防除成分が放出されることが示唆されました.これはアーモンドの木の健康改善に役立ちます.またアブラナ科のラピーニ(rapini / broccoli raab日本ではスティックセニョールの名で流通)は耐寒性があり,定植後6週で開花,側花蕾が多数でるので,花期が長い.ラピーニの花粉はミツバチに良く消化吸収され,必須アミノ酸を提供し,蜂病を抑制します.ミツバチは明るい黄色のこの花が大好きです.

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アーモンドとミツバチ  その2

大規模な単一栽培により,アーモンド生産者は自然資源を不当にいためつけているとの見方が広まり,規制が強化されました.アーモンド業界は蜂群の健全育成を支援するため, 2011年以来113平方キロメートルに花蜜・花粉源植物を植栽する活動をつづけています.

全米随一の大規模養蜂家.ジョン・ミラーは,変化は常に起きると言われているが,養蜂とアーモンド農園の関係でもまさにしかりだ,とのべました.

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アーモンドとミツバチ その1

アメリカ西海岸,温暖なカリフォルニア州のセントラルバレーに広がる3千平方キロメートル以上のアーモンド農園では2月に開花が始まり,その花粉媒介を全面的に養蜂家が飼養するミツバチに依存しています.アーモンド農園は人出を省き,大型機械で効率よく作業をするために,広大な敷地に,アーモンドの木だけを育てていました.下草はすべて除草しており,アーモンドが咲く時期以外にはミツバチの採餌先が何もありません.

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ハチミツを傷口に その3 創傷への適用

 ハチミツは古くから,ヨーロッパ,エジプト,インド,中国と世界中で伝統的な医薬として使われてきました.私は2001年にイギリス IBRAから出版された Honey and Healing の日本語版「ハチミツと代替医療」にかかわったので,世界各地で進められていたハチミツの医学的臨床研究を知りました.

 マヌカハニーだけでなく,やけどやなおりにくい潰瘍の治療,ハリナシバチハチミツで白内障治療など,大変興味深い内容ばかりでした.

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ハチミツを傷口に その2 甘い殺菌者

 今日世界中で300種以上の多様なハチミツが生産されています.ミツバチが訪れて,花蜜を集めてくる花の種類が違えば,それを元に作られるハチミツもそれぞれ異なった性格を持ちます.口器で吸い上げた花蜜をミツバチは腹部にある蜜胃に貯めておき,巣に戻ると,蜜胃の中身を貯蜜巣房にはき戻します.

 写真はオーストラリア北部のアボリジニのご夫婦が野生のハナバチの蜜を採集しているところです.甘い蜜を食料として,また感染症用軟こうや薬として使います.プロポリスは道具づくりや防水に活用.洞窟の壁画に使った人々もいたそうです.

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ハチミツを傷口に その1

 傷ぐすりとしてハチミツを使ったことありますか?ハチミツのもつ抗菌作用についての研究し,その効果について科学的裏付けを与えようとの活動がつづいています.古代から使われてきた代替医療治療薬ハチミツが,現代医学の主流に登場するかもしれません.CATCH THE BUZZ はハチミツの抗菌作用についてすでに四半世紀研究を続けているシドニー大学の微生物学者,ディー・カーター博士の話を伝えました.

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ミツバチの栄養 その2

 花粉はアミノ酸,脂質,ミネラル,ビタミンを供給する,ミツバチに不可欠な栄養源です.

 本稿はオーストラリア,ニューサウスウェールズ州農業省が養蜂家向けに提供する情報で,extensionaus.com.au/professionalbeekeepers/home?

Somerville (2005) Fat Bees Skinny Bees – a manual on honey bee nutrition for beekeepers.に基づいています.

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ミツバチの栄養 その1

 ミツバチが食べるものは花蜜 (炭水化物) と花粉 (タンパク質) です.明解ですね.

 でももう少し細かく言えば,ミツバチの健康維持に必要な栄養素はアミノ酸,脂肪,ミネラル,およびビタミン類です.それぞれについてみてみましょう.

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ビーズフォディベロップメントからの手紙 その2

 5月には大きな行事が多数予定されていました.ビーズフォーディベロップメントにとって,大切な季節なのです.まず地元モンマスでミツバチフェスティバルを開催,そして「持続可能な養蜂」やその他のBfD養蜂講座はどれも予約で満員になっていました.

 世界に知られた王立園芸協会のチェルシーフラワーショウでは今年,エジプト風造園デザインで花粉媒介生物への感謝の気持ちを表す予定でした.

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ビーズフォディベロップメントからの手紙 その1

 美しく素晴らしいお天気の5月になりました.ところが今年は新型コロナウイルス対策で私たち人間は活動が制限されており,ミツバチの方がよほど遠くに自由に飛び回っています.

 本当にそうなのです.イギリス・ウェールズのモンマスにある私たちの活動拠点でこの手紙を皆さんあてに書いていたら,分蜂群が飛来して,建物の横に置いてあるビーハウスに落ち着きそうです.

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米国農務省ミツバチ研究部門長からの依頼

 有力養蜂雑誌Bee Culture から Eメールでほぼ毎日とどくCatch the buzz は学術研究からイベント,業界の話題など新しく多彩な情報の源です.

 COVID-19 対策で,担当者が今日(3月23日)から自宅で発信となり,前代未聞の事態で不安と嘆く一方,米国政府ミツバチ研究部門のトップから不足するマスクを養蜂家から提供してほしいとの真摯な依頼も伝えています.

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ミツバチヘギイタダニ その2

 ミツバチヘギイタダニの感染がどれほど危険か,たくさんの証拠があります.トウヨウミツバチから,新しい宿主であるセイヨウミツバチに寄生先を拡大して以降,世界中で何十万群ものコロニーが失われました.このダニを完全に排除するのは困難ですが,その寄生率を低く抑えることで,生産性の高い養蜂を続けることは可能です.

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ミツバチヘギイタダニ その1

ミツバチヘギイタダニはバロア病の原因とされるミツバチの寄生ダニです.ミツバチの体中ではなく,外部寄生性で肉眼でも見ることができます.ミツバチの生活環で,成蜂と蜂児期のどちらにも寄生して,有害な病原菌をコロニー内だけでなく,外の他のコロニーにまで感染させます.元々はトウヨウミツバチに寄生していました.

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クリスマスの前の晩に

 クリスマスの前の晩に,蜂場の巣箱をみつめて,蜂夫は大いに気をもんでいた TWAS the Night BEEfore CHRISTMAS

「うちの蜂は元気にしているかな?」養蜂家が冬越し準備ですべきことは,全部やった.蜂に給餌し,巣箱をくるみ,シュガーキャンディーもいれた.

 素晴らしかった夏の日々を思い出す.蜂たちは一丸となって働いていた,それぞれの蜂が自分のつとめを果たして.

 

https://www.beeculture.com/catch-the-buzz-twas-the-night-beefore-christmas/

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アピモンディア2019で見たもの聞いたもの  その3

Miels d'Anicetは寒さに強い系統の女王蜂生産をメインにしています.翌朝ひろいソバ畑に置いてある蜂群を見学,霧雨に風が吹くかなりの肌寒さでしたが,咲き残りの花や大型給餌器(ドラム缶)に蜂が来ていました.かなり体色が黒めな系統です.ほかに無農薬有機栽培の農家と契約してポリネーション用に蜂を置いているそうです.

じつは温暖なカリフォルニアの,ワイン生産で有名なナパバレーでも春早く出荷できるように女王蜂を養成しており,さらに今後の気候変動に対処できるような系統も,研究機関と協力して開発中とのこと.すごいですね.

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アピモンディア2019で見たもの聞いたもの  その2

閉会式翌日から1泊2日の見学旅行に参加しました.目的地はモントリオールの北方向にバスで4時間ほど行った Ferme-Neuve, Quebec にある Miels d'Anicet 養蜂場です. https://mielsdanicet.com/fr-ca/  

ミツバチ研究で修士か博士を出た高い理想を掲げる若き養蜂家Anicet & Anne-Virginie Desrochers夫妻が,農薬散布のない遠隔地に10数年かけて発展させてきた先進的な養蜂場.緯度はケベックシティーと同じくらい,9月半ばですでにコートがほしい気温でしたが,Miels d'Anicet のミツバチはまだ飛んでいました.

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アピモンディア2019で見たもの聞いたもの その1

アピモンディア2019 第46回国際養蜂会議は9月8-12日に,カナダ東部,ケベック州モントリオールで開催されました.134カ国から合計5,500名ほどが参加し,口頭発表は320題,ポスターも360題以上.ポスター会場がシンポジウム会場に隣接し,発表者と見学者の意見交換が盛んに行われていました.

写真はアピエクスポ会場で2年後,ウファ(バシコルトスタン共和国)での会議を宣伝するロシアのスタンド.公式ウェブサイトでは,盛会だった会議の様子が大量の写真と動画で公開されています.https://www.apimondia2019.com/gallery/

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都会のミツバチが集める花粉 その2

こちらの写真は,東京都内の住宅地におかれた巣箱に花粉収集器をとりつけ,午前中数時間のうちにミツバチが持ち帰った花粉団子を集めたものです.前の写真とは違って,こちらではセイヨウミツバチは近隣の環境に咲く多様な植物の花を尋ねて,様々な色の花粉を集めています.

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都会のミツバチが集める花粉 その1

市街地におかれた蜂群が,周囲の環境から集めてくる花粉は,季節ごとに大きく変化することがわかりました.セイヨウミツバチ群では健康な蜂児を育て,コロニーを維持し続けていくために,タンパク質を豊かに含む多様な花粉が必要です.年間のある時期に開花が減り,花粉不足や貧栄養な花粉しか採れないと,その間は蜂児の生育に必要な栄養が賄えません.写真の花粉団子は同じ色が多く,花粉源があまり多彩でないのか,この花がよほど大量に開花中なのか,どうでしょう.

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養蜂作業の友 燻煙器 その3

燻煙器からは低温の白い煙が出てほしい.強い熱風が吹き出されたら,ミツバチの翅,体毛/剛毛,それに触角が焼けてしまう.

米国農務省・農業研究サービスで1997年にバロアダニに対する燻煙の効果をしらべた興味深い試験が行われている.40種の植物のバロアダニに対する防除効果を試験したもので,もっとも期待できそうな植物は乾燥させたグレープフルーツの葉とクレオソートブッシュ(多年生木質植物)だった.

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養蜂作業の友 燻煙器 その2

燻煙器の点火方法:燻煙材料の基本は天然素材で,油脂,殺虫剤,保存料などが着いていないものをえらぶ.燃焼缶の底部で点火する.良く燃え始めたら燃料を少し追加し,ふいごを吹いて燃え上がらせる一方,燃料をさらに追加する.底部から1/3ほどまで燃料が入り,ふいごの風で調子よく燃え続けているようなら,燃焼缶が一杯になるまで,燃料をげんこつでぎゅっと押し込み,さらにふいごを吹く.燻煙器のノズルから冷たい,白い煙が大量に出てくるまで,風を送り続けよう.

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養蜂作業の友 燻煙器 その1

養蜂家の作業効率には,どんな大きさの燻煙器を使い,それにどんな素材を詰めて燻煙剤として使っているかということが,大きく関わってくる.大型の方が点火しやすく,長時間消えずにいる.やけどを防止するガードがある方が使いやすい.燃焼させる素材しだいで,火が具合良く燃え続けるかどうか変わってくるだろう.

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ミツバチと父の日

 父の日(6月第3日曜日)を祝い,Facebook のEthnobeeology にアップされた「太った,お気楽な紳士達」と題された図です.

 お父さん蜂が息子たちにやさしく語りかけているのでしょうか?ミツバチの絵本などで見かけたことがほとんどないテーマですね.

 実際には,ミツバチの社会に父親と子の団らんは存在しないからです.

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見学旅行でハッタの養蜂基地へ その2

朝8時に集合場所に行くと,やや古めのマイクロバスにすでに乗客がすし詰め.私は補助席に座らせてもらい,出発しました.片道5車線のフリーウェイをドバイまで.そこから右折して砂丘が目立つ高速道をさらにひた走ると,やがて茶色い岩山が見え始めました.もう一度右折して,ついに山岳地帯に入ります.山はわずかに緑色を帯びているけれど,植物はごくわずか.山肌にスイカからメロンくらいの大きさの穴がときどき見えます.正午過ぎに養蜂基地に到着.容赦ない真夏の暑さ.

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見学旅行でハッタの養蜂基地へ その1

アラブ首長国連邦アブダビで開かれる,アピアラブ・エクスポに参加しようと決めた理由の一つが,大会HPの日程表に表れた4月4日の見学旅行でした.”8:00- 16:00 Trip to Bees Garden – Hatta, Dubai”.UAEのドバイといえば,アブダビ以上に砂漠と超高層ビルのイメージですが,ミツバチはどこにいるのでしょう.

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アブダビで アピ・アラブ・エクスポ その2

4月1-2日に,最新農業技術フォーラム(GFIA)がアブダビ国立展示センター(ADNEC)において,アラブ首長国連邦【UAE】副首相・大統領府大臣・アブダビ農業・食糧保証庁長官“シャイフ【シェイク】”・マンスール・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーン殿下の後援により,開催されました.

ミツバチはUAEがこのように大規模な展示会を企画し,農業新技術の導入により国内生産を増やそうとめざしている農産物の花粉交配をにないます.また昔からイスラムの人々に欠かせない甘味の元,ハチミツを生産するのもミツバチです.

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アブダビで アピ・アラブ・エクスポ その1

4月になり,あたらしい元号が発表されたとき,私は日本の様子が伝わりにくいところにいました.3月31日の夜に成田を発ち,アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビに向かったのです.偏西風に逆らって西に向かうフライト.飛行時間は通常よりのびて,12時間以上.延々と夜を飛んで来たのに,到着したらまだ夜中の午前2時前でした.

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施設園芸の花粉交配 その3 イチゴハウスで

 ハウスの中におかれた巣箱からミツバチたちがイチゴの花を訪れにでかけます.ミツバチは自分が食べるだけでなく,巣でまつ幼虫や他の仲間を育てるために,大量の花蜜や花粉を集め,貯蔵する性質があり,多くの花を訪れます.

 しかし閉鎖された施設の中,農作物の近くで働くことは,この勤勉な小さな生き物に多くの困難をもたらします.

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施設園芸の花粉交配 イチゴ その2

 2015年イチゴ生産高は全国で158,700トン.都道府県別では栃木県24,800トン,福岡県16,000トン,熊本県10,900トンがトップ3です.

 最近,イチゴは冬の果物として扱われ,本来の季節(5~6月)が忘れられがちですが,11月から出荷されるようになったのは,ミツバチが温室内で花粉交配を助ける現在の生産技術が開発された成果です.

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施設園芸の花粉交配 イチゴ その1

 昆虫が訪花し,花粉を運ぶことにより受粉が行われ,植物に実がなります.世界の食糧生産の9割をしめる作物100種のうち,70種がハナバチ類や他の昆虫の送粉サービスに助けられており,全世界で昆虫による花粉交配が寄与する経済価値は1500億ユーロに上ると推計されています.ミツバチは農業に関わる昆虫の代表.勤勉な送粉者として世界の食料安全保障(food security)に大きく貢献しているわけですね.

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ミード アメリカで復活?

クラフト飲料産業の興隆に乗る形で,ミードが復活しようとしています.「クラフト飲料が大注目され,全米でビール,蒸留酒,リンゴ酒などの,小規模に手造りで製造管理する醸造所が雨後の竹の子のように出現している.それに比べ,ミード醸造はほぼ手つかずで,大きく伸びる可能性がある」,とコーネル大学ホテル学科のD.ミラー講師はヴォーグ誌の記事でのべました.

 写真は2005年アイルランド・ダブリンで開かれたアピモンディア2005の思い出の品です.アイルランドを去る前日に訪れたBunratty Castle and Fork Park で,このミードの小瓶を見つけたときは舞い上がり,大人買いをしました.こちらも経年で色が濃くなっています.

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ミード(はちみつ酒) 昔のはなし

ミードをお飲みになったことありますか?日本にはすばらしい醸造酒の世界があるので,ニホンミツバチを飼う養蜂で,ハチミツ酒をつくる伝統はないようです.でも古代には世界の多くの文明でミードが重用されていました.ミードは世界最古のアルコールとも考えられていて,中国,河南省の紀元前7世紀新石器時代の遺跡で,壷の中でハチミツ,米,果物をまぜて発酵した飲み物の痕が見つかっているそうです.

写真は2003年スロベニア・リュブリャナでのアピモンディア開催時に手に入れたミード小瓶です.経年でミードの色が濃くなり,ガラスに書かれたスロベニアの文字が見えにくくなりました.

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A.I. とL.L.の交流

創業者 エイモス・ルートAmos Ives Root (1839–1923) はエジソンやフォードと同時代に米国で活躍した起業家,発明家です.新技術に強い興味を持つ同郷(オハイオ州)の有力者として,ライト兄弟を早くから支援し,記録したことでも知られます.

養蜂産業が米国の農業経済発展に大きく寄与していた19世紀後半に,優れた養蜂企業家としてA.I. Root社を創業,近代的な養蜂器具を販売し,技術指導にも力を入れていました.

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大正元年の養蜂企業風景

face book で養蜂関連の伝承や古い資料を紹介するHistorical Honeybee Articles - Beekeeping History よりご紹介.この大正元年(1912年)に投函された古い絵はがきの郵送料は1セントでした.表の絵はアメリカの2大養蜂雑誌のひとつ,Bee Culture 誌の出版元,A.I. Root社の当時の様子をつたえています. 

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ロンドン中心部,ピカデリー産ハチミツの競売と夕食会

フォートナム&メイソンは1707年設立以来300年以上高品質な食品を扱う百貨店として国際的に知られた,イギリス王室御用達の老舗です.じつは10年前からロンドンのフォートナム&メイソン,ピカデリー本店屋上でミツバチが飼養されています. 写真は誠にエレガントな特製巣門をもつ同社の巣箱です.今月,10周年を記念した特別なチャリティーイベントが行われます.

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Apimondia2019  ⑤ カナダ養蜂の現状 

養蜂業界は急成長中! 8,400名以上の養蜂家が,67.2万群以上を飼養しており,カナダの養蜂業界は活気に満ち繁栄している.2013年の総飼養蜂群数は過去五年間の平均蜂群数を9%上回った.大多数の蜂群はプレーリー(平原/中央部の大草原)にいて,昼の長い夏季に大いに採餌する.アルバータ,サスカチュワン,マニトバの3州からカナダのハチミツ総生産量の84%が生産されている.国内総生産量は約3.4万t,金額にして1億7千8百万カナダドル以上にのぼる.

引用: http://keynoters.co.jp/images/sample/canadama

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Apimondia 2019  ④ 会議タイムテーブル

2019年9月8日(日)から最終日9月13日までの時間割が発表されました.学術プログラムの基調講演と各セッション,円卓会議の部屋割りが決まっています.

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Apimondia 2019大会案内 ③ 会議登録 見学旅行

会議登録と登録料

大会ウェブサイトのRegister Onlineで参加登録ができる.まず登録サイト内に自分のアカウントをつくり,そこから参加登録と宿泊予約,発表申し込みができる.カード決済にMasterCard, Visa,が使用でき,登録時に全額払い込む必要がある.登録料の銀行送金も可能.方法は大会サイト参照.

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Apimondia 2019大会案内 ② 学術プログラム

第46回アピモンディア国際養蜂会議ではミツバチ関連分野の研究者と養蜂家の皆さんにそれぞれ興味を持っていただける幅広い話題が討議されるだろう.学術論文は7つのアピモンディア常設委員会が用意する各シンポジウムのテーマにあわせて,分類される.新たにモントリオール大会で加わるのは「分野横断シンポジウム」で,これは複数の分科会分野を視野に入れた話題を取り上げる.

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Apimondia 2019大会案内 ① 会場 宿泊 アピエクスポ

“持続可能な養蜂へ,農業と共に働くとカナダは答える”をテーマに,第47回国際養蜂会議が2019年9月8日(日)から13日(金)までカナダ・モントリオールの国際会議場the Palais des congrès de Montréalで開催される.    

会議ウェブサイトでは参加登録,発表申し込み,展示会出展申し込み,ホテル予約などがはじまった.8月末に公開された学術プログラム時間割を含め,大会案内第1報をまとめた.

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巣箱の置きかたと注意点 その2

5月のブログで取り上げた分蜂行動はミツバチの自然な欲求です.ミツバチは単独では生き延びられない社会性昆虫,大きなコロニー内の一員として生きています.ミツバチが末永く繁殖していくためにコロニーは分割してふえていく必要があり,それがまさに分蜂行動なのです.一方,養蜂家にとって,これまで育ててきた蜂群から女王蜂と半分の働き蜂が飛び出してしまい,それを回収できなかったら痛恨の極み.分蜂行動をうまく調整して,蜂を失うのでなく,増やしていけるようにしたいところです.

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巣箱の置きかたと注意点 その1

米国のAmerican Bee Journalと Bee Cultureをはじめ,中国,アルゼンチン,トルコなど世界の養蜂大国では月刊養蜂雑誌が発行され,飼養技術をはじめ養蜂関連情報が公開されています.初心者がミツバチを巣箱で飼養するなら,始める前に知っておくべきポイントなどもくりかえし取り上げられますが.養蜂実技に関する書籍が不思議なほど少ししか出版されていない日本では,目にする機会が少ないので,ほんの一部ですがご紹介しましょう.

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ミツバチヘギイタダニとバロア病

ミツバチヘギイタダニに感染した蜂群はすみやかに適正な対策が施されないと,しだいに勢いが弱まります.採餌,育児,巣の防御など通常の活動機能は低下していき,やがてコロニー全体が機能不全に陥る蜂群崩壊へと向かいます.このダニの存在は必ずしも目立つ訳ではないので(多くの時間を有蓋巣房内ですごす),突然蜂群がだめになって養蜂家は不意を突かれることになるのです.

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ミツバチヘギイタダニは強力な害敵

ミツバチヘギイタダニ(バロアダニVarroa destructor (Anderson and Truman))は ミツバチ成蜂と幼虫の体外に寄生するダニです.過去数世紀にわたり世界のミツバチの最も手ごわい害敵であり,生来の対抗手段をもたないセイヨウミツバチはとくに深刻な被害を被っています.その寄生数が上昇すると,ミツバチコロニーはバロア病と呼ばれる一連の症状を発症し,的確な対策がなされないと,この蜂群は2~3年のうちに死滅するでしょう.

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分蜂シーズンの到来 その2

 新たに出房した若い女王蜂は交尾飛行から戻り,産卵を開始すると巣内にとどまります.ローヤルゼリーを十分に与えられ,大きな腹部から産卵の日々.ローヤルゼリーは完全に消化されるので,糞をするために巣の外に飛び出ることもないのです.ところが分蜂準備が始まると,働き蜂から女王蜂へのローヤルゼリー給餌が控えられるようになり,女王蜂は腹部がほっそりとなります.

 写真右上の女王蜂,腹部は普段これほど大きくなっています.

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分蜂シーズンの到来 その1

 大学生になれば5月のゴールデンウィークに大いに楽しめると思っていました.ところが,「ミツバチ研究分野の教員や学生に連休などありません.分蜂群を至急回収して欲しいとの依頼にそなえ,準備して待機するのです」ときびしい言葉を聞かされました.もう半世紀ほど前の話ですが.

 写真は分蜂が起きる数時間前のある蜂場の様子です.良い天気で花盛り.

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春になったら蜂が増えて

「私の蜂場周辺にはアブラナ畑があり,いつ開花するか,その成長を注意深く見守っています.それで,私の蜂群に上置き巣箱を追加するのは,いつ頃がベストでしょうか」.この質問をした方はたとえば,「菜の花が5分咲きになった頃に,2段群にするのが良いでしょう」という分かりやすい返事を期待したのでしょうか. 

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春を待つ日々  その2

 Bee Craftは月刊雑誌なので,季節に合わせた蜂群飼養管理技術をかなり具体的に毎号掲載します.花粉媒介昆虫の危機を理解し,彼らに必要な環境の保全にも協力しようとの思いから趣味養蜂を始めた,入門レベルの購読者が近年多数いるので,ベテランが自分のノウハウを開示する連載記事なども.概して英国人は分かり易く教えるのが好きだし,うまいですね. 

 さらに購読者にはほぼ毎週,お役立ちメールがとどきます.

写真は昨年2月号の表紙.こうして巣箱を開けてゆっくり内検できる春の到来を今か今かと待っているのでしょう.

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春を待つ日々 その1

 ひどい冬ですね.昨年末から米国は記録的大寒波におそわれて,日本にも低温と冬の嵐が繰り返し来襲して,野菜が高騰.遅れた梅も開花しはじめ,私たちはやれやれ春がもうすぐだと期待する2月末に,寒波がこんどはフランス,イギリスをめがけて東から吹き出しています.

 越冬してきた蜂群が春を前に活動を始めようという冬の終わりは,ミツバチに一番厳しい,難しい時期です.そこに寒波で大雪!? イギリスのミツバチは大丈夫でしょうか.とても心配です.

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蜂ロウ製ロウソクの優れた点

もちろん蜂ロウは高価なものです.ミツバチの労働の結晶であるハチミツから,その1/6の重さのロウが作られます.ミツバチがロウでつくる巣板,たとえば春に巣箱の中で見つける無駄巣を手にとってごらんなさい.半透明の精緻なハニカム構造で,ふんわりと厚みはありますが,紙よりはるかに軽いです.ロウソク1本分の蜂ロウを得るのにどれだけの巣が必要でしょう.ハチミツを得るためにどれだけのミツバチが飛び回ったでしょう.

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蜂ロウ製のロウソク その2

蜂ロウ製のロウソクは古代エジプト,古代ギリシャ・ローマ,中国の東晋時代に使われた記録があります.もちろん記録に残らないもっと以前の時代にもあちこちで燃やされていたはずです.しかし蜂ロウは高価で貴重な素材だったので,だれもがこのロウソクを潤沢に使うわけにはいきませんでした.

高温で美しく燃える明るい炎は,特別の日に,特別の場所でみつめた人々の希望の光だったのでしょう.

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蜂ロウ製のロウソク その1

今冬は例年にない厳しい寒波が続きますね.日照時間が短く,暗く寒い時間が長い冬は,いつの時代の人々にとっても,つらく厳しい時期だったでしょう.ふたたび光りがあふれ,植物がみどりを回復し,虫,鳥,けものたちが姿を現す暖かな春の訪れを,みな心から願ったに違いありません.冬の祭りに沢山のロウソクが灯されたのは,明るく暖かな春が巡り来ることを待ち望む気持ちの表れでもあったはずです.

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5月20日はワールド ビー デイ

5月20日はワールド ビー デイ(世界ハナバチの日)と先の国連総会で制定されました.

世界の食糧供給を保証するためには,持続可能な農業生産におけるハナバチの働きが大切であること,しかし開発や温暖化による環境の変化が,花粉媒介者の生息を困難にしていることを人々に広くうったえ,ミツバチや養蜂を担う人々の支援には農作物との円満な関わりが不可欠であることへの理解を求めます.

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クシュマン氏のビースペース考察 その2

 ◇7ミリの空間:ミツバチ自身ではなく人間が器材設計などの場面で有効なビースペースとして採用している.巣枠の上桟の両端と巣箱側面にこれだけの隙間が確保できれば,ミツバチがロウとプロポリスで固着しようと励むのと戦う面倒から逃れられるだろう.

 今月の写真はセイヨウミツバチ自然巣の存在を知らされて,対策にはせ参じたミツバチ研究者たちと複葉の立派な巣の様子です.密集した松葉にまもられた大きな自然巣で,このように巣板間のサイズを測る機会はめったにありません.

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クシュマン氏のビースペース考察 その1

L.L.ラングストロス師が「ビースペースを発見した」とか中には「発明した」と書いてあるものを見たことがあるが,もちろんそれらは正しくない.ミツバチ自身がビースペースを編み出したのであり,人間もそれを遙か昔から知っていた.ただそれをふまえて,巣箱での飼養にきわめて有効な方法を開発したのがラングストロス師なのだ.

http://www.dave-cushman.net/bee/bsp.html

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ビースペースと近代養蜂

ラングストロス師は1852年に最初の可動巣枠式巣箱を制作,飼養試験を開始しました.ビースペース概念をふまえた可動巣枠式巣箱と,この可動巣枠をいれた箱を積み上げる方式の巣箱の開発により,養蜂は家内工業から大規模な産業へと大きな変貌をとげて,広く豊かな国土に恵まれる米国では1800年代末までに数千群の蜂群でハチミツ生産をおこなう養蜂企業家が数名出ていたということです.

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ビースペースとは

木の幹にできた洞(うろ)など,閉鎖空間に複数の巣板を作って暮らすミツバチ(セイヨウミツバチ,ニホンミツバチをふくむトウヨウミツバチ)は,コロニーに必要な仕事をするために多数の蜂が巣板から巣板へと歩き回ります.「ビースペース bee space」とはミツバチが自然巣内で隅々まで自由に行き来できるように残しておく隙間のこと.この空間をミツバチがプロポリスをつめこんだりあらたに巣房をつくって,埋めてしまうことはほとんどありません.

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テイスティングに適した匙

ハチミツを買う前に,その味を試してみたいですか?大きなメーカーの商品はどこの商品棚に並んでいても同じ色,同じ味のハチミツが予想されるのですが,ハチミツ専門店には各地から集められた,かなり薄めの色から様々なこはく色,もっと濃いもの,また透明感があるものとないものなど,多様なハチミツが並んでいます.

色々なハチミツを食べた経験がある人なら,色だけでなく,味と香りも様々であることをご存じでしょう.そんなハチミツ試食でつかう匙についてもウースターシャー養蜂協会のM.クラックネル会長はうんちくを述べていました.

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ハチミツ試食のジレンマ

「特徴あるハチミツの味を比べるテイスティングは英国養蜂協会が1933年に始めて以来,いつでもどこでも大人気のイベントです.地元ウースターシャーのマルバーンで開催される王立園芸協会(RHS)の春のショーには毎回6万人もが集まります.ウースターシャーの多様な植物で生産されるハチミツを通して,ミツバチや植物についての啓蒙活動をするねらいで私たちもRHSのショーに参加し,ハチミツの展示即売とテイスティイングを始めたところ,思いもよらない難問,ジレンマが色々でてきたのです.」イングランド南西部,ウースターシャー養蜂協会のM.クラックネル会長がそこでの内輪話を英国養蜂協会の雑誌Bee Craft に寄稿していました.

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クマのプーさん誕生秘話

ハチミツがどんなにおいしくてすてきな食べ物かを,世界中に伝えてくれている有名なクマといえば,クマのプーさんですね.イギリスのA.A. ミルンが書いた4編の児童小説には,幼い息子クリストファーと彼のクマのぬいぐるみ,そして森の仲間たちとのゆかいなエピソードが綴られています.

ぬいぐるみではない,本物の小熊の大冒険が始まったのは1914年8月24日,カナダでのことだったと,クマのプーさん誕生秘話がつたえられました.

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Apimondia 2017 ③ 総会,2021招致立候補国,会議登録料 

原則としてアピモンディア/国際養蜂会議は欧州とそれ以外の地域とが交互に開催することになっています.ウクライナ/2013→韓国→トルコ→カナダ/2019で,2021年は欧州の番.事務局長ジャンノニ・セバスティアニーニ氏のメールでは現在立候補国はデンマーク,ロシア,セルビア,スロベニアの4カ国だそうです.あなたはどの国の養蜂事情に興味がありますか?

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Apimondia 2017 ② 見学旅行の詳細 

開催国のいろいろな事情を,各国からの参加者とともに体験できて,ミツバチ好きには忘れがたい一日になることが多い,アピモンディアの見学旅行.トルコなら全国各地,いくらでも企画できたでしょうが,現在の社会情勢を踏まえて,安全な近場が選ばれたようです.参加費用が値下げされ,ひとり75.-EURO (交通,ガイド,昼食,税込み)に.

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Apimondia 2017 第45回国際養蜂会議の開催 ①

 “2つの大陸がであう場所にミツバチと集合”をテーマに,第45回国際養蜂会議が2017年9月29日(金)から10月04日(水)までトルコ・イスタンブールのイスタンブールコングレスセンター(ICC)で開催されます.HP (http://apimondia2017.org/)やメールで届けられた最新情報をまとめました.

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サクラメントの養蜂家を百万ドル相当の巣箱窃盗容疑で逮捕 ②

写真は同じバラ科ですがサクラの仲間です.アーモンドはバラ科モモ属で,開花時に葉はまだあまり開かず,サクラより花柄がみじかい.花の中心部の紅色が濃いものが多く,枝に多数の花がびっしり並んで咲くところは一重のモモやアンズに似ています.

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サクラメントの養蜂家を百万ドル相当の巣箱窃盗容疑で逮捕 ①

米国カリフォルニア州で頻発する蜂群窃盗事件の捜査陣は,地元加州の養蜂仲間と,早春のアーモンド農園での仕事をめざして全国から集まる養蜂家のネットワークから協力を得ていました.以前に盗まれた知り合いの巣箱を,ある養蜂家の作業場で見つけたとの有力情報がこの逮捕につながったとロサンゼルスタイムズ紙が伝えます.

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南アでミツバチが国際クリケット試合に乱入

まじめな解説が続いたので,気分転換しましょう.少し前にインターネットで,グランドの芝生にうつぶせになる選手とミツバチが何とかというニュース写真を見ました.イギリスの養蜂雑誌Bee Craft がつたえるその詳細をおとどけします.

南アフリカ・ヨハネスブルグで先日行われたクリケットの国際試合で,観衆は思いがけなく養蜂家大活躍の様子をみることになりました.

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タンパク質を消費するストレス

ミツバチのタンパク質要求量はストレスの強さにより変化します.蜂群にストレスがかかっているときに,必須アミノ酸をもれなく補えるように,良質の花粉などを給餌すれば,その先の蜂群縮小を予防できるので効果的です.蜂群にかかっているストレスを理解すれば養蜂家は必要な栄養管理ができるでしょう.

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ミツバチにとってタンパク質は

ミツバチの体タンパク質量はその蜂群の越冬可能性,ハチミツ生産性,ヨーロッパ腐素病(EFB)やチョーク病など多くの蜂病への耐性をしめす目安となり得ます.耐タンパク質量のレベルが高いほど,ハチミツを多く生産でき,花粉媒介能力や女王蜂養成能力が高いのです.

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ミツバチの健康に必要な栄養 タンパク質

働き蜂が花粉を消化して体内に貯蔵していたタンパク質を,ふたたび分解して栄養豊富な濃厚な液をつくるのは,母牛が体細胞から子牛に飲ませるミルクを作るのによく似ています.

哺乳類以外で,こんな風にすぐれた食べ物を自ら造り出して,与え育てる生物はすくないでしょう.

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ミツバチの健康に必要な栄養 花蜜と花粉

ミツバチが健康でいるためには他の動物と同様,バランスの取れた食物が必要です.炭水化物・糖質,タンパク質,ビタミン,ミネラル,そして水分も不可欠な栄養分です.ミツバチを取り巻く環境が急速に開発され,たくさんの多様な花々が季節ごとに咲き,危険な薬剤と遭遇することもない,ゆたかな山野の多くが失われました.養蜂家は自分が飼養する蜂群がバランス良く栄養を摂れているか,以前よりも注意するよう求められます.

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ミツバチコロニーと女王蜂 その4

新しい女王蜂は旧女王が産んだふつうの受精卵から育ちます.ふ化後3日以内のごく若い幼虫から選ばれて,多くの仲間とは異なる道を歩み出します.

コロニーが新しい女王蜂をそだてる道筋は3通り,すなわち緊急時の変成王台,女王蜂交代,そして蜂群繁栄への王道である分蜂の準備です.

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ミツバチコロニーと女王蜂 その3

2番目に大切な女王蜂の機能は,数種のフェロモンの分泌で,この化学物質がミツバチコロニーをまとめ,協働してそれぞれの役割を果たすべく動かす,社会を束ねる働きを持っています.

”女王物質”とも呼ばれる主要なフェロモンは, 大顎腺から分泌されますが,他にも重要なフェロモンを女王蜂は出しています.

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ミツバチコロニーと女王蜂 その2

 女王蜂は通常コロニーに一匹だけです.でも例外的に分蜂や女王交代の準備時期には複数存在する時間があります.女王蜂だけが性的に成熟した雌なので,求められる第一の機能は順調な産卵.越冬を終えた春から夏の初めまでの時期には連日多数の卵を産み続け,1日に最大1500個を巣房に産み付けます.

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ミツバチコロニーと女王蜂 その1

ブログの数がふえてきたので,各ページにキーワードをつけて内容を分けてみました.右上にボタンがあります.

ミツバチの基本的なはなしのうち,これまでに働き蜂は取り上げてありましたが,女王蜂についてはまとめていなかったので,今月と来月に書き込もうとおもいます.

多数いる他の蜂とはかなり異なる一生をおくりますが,決して独裁者のように君臨統治しているわけではないんです.

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季節変化とミツバチコロニーの活動 2-冬

気温が14℃くらいに下がると,ミツバチはそれまでより密に集合し,蜂球を作ります.ミツバチが発する熱により,蜂球内部の巣板では蜂児(卵,幼虫,蛹)が34℃ほどに暖かく守られています.女王蜂の産卵は徐々に減り,10月か11月には,まだ巣板に花粉が蓄えられていても,完全に止まり女王蜂の体はほっそり.寒い冬はコロニーが蓄えと仲間をたよりに生き延びる厳しい我慢の時間です.一方,寒くならない亜熱帯,熱帯地域や冬も穏やかな気候の地域では,女王蜂の産卵と蜂児の生育が休みなく続きます.

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季節変化とミツバチコロニーの活動 1-秋

蜂群の活動は季節に応じてかわり,9月から12月がミツバチコロニーの新年といえるでしょう.秋に多くの若い蜂をえて,たくさんのハチミツと花粉を蓄えられるかどうか.この時期の状態が1月以降の蜂群の盛衰の鍵を握ります.

アメリカのMAARECは私が頼りにしている尊敬すべき情報源のひとつで,今回はその充実した記事のほんの一部をご紹介します.

https://agdev.anr.udel.edu/maarec/honey-bee-biology/

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要旨提出システム

前回2015年韓国大田でのアピモンディアでは,アジア養蜂研究協会(AAA)大会,国際昆虫学会と,大規模な国際会議主催の経験を重ねた韓国の中堅研究者が,学術プログラムの運営に采配をふるっていました.そういえば閉会式での報告にはとても具体的な提案が含まれていて,すごいなあと思いました.それらがこの2017イスタンブールの要旨提出要項の内容に反映されているように思います.

新しい要旨提出期限にご注意ください.

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アピモンディア2017発表要旨提出要項

2017年9月開催アピモンディア2017の,要旨提出に関する詳細がアップされました.要旨がどのように評価・採用されるのか,新らたにその基準が公表されています.ほかにも,過去の会議で問題になった事例をふまえたのか,会議の発表申し込みに関連する,ありそうなルール違反やクレームに対して,あらかじめ「それは認めない」と明示しているところに,会議運営のご苦労がうかがえます.

提出期限が2017年5月1日にかわりました.

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Apimondia 2017発表募集トピック

ミツバチ生物学,養蜂技術と品質,養蜂経済,ミツバチの健康,花粉媒介と養蜂資源,村落開発養蜂,そしてアピセラピーの7つのアピモンディア科学委員会が,多岐にわたる学術研究や養蜂活動などの発表や討論会をおこないます.各委員会の発表募集トピックが提示されましたが,そこには現在の養蜂が直面する様々な問題が網羅された感があります.発表要旨提出期限は2017年3月1日ですが,提出に関する詳細はまだわかりません.http://www.apimondia2017.org

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アピモンディア2017まであと1年

“2つの大陸がであう所にミツバチと集合”をテーマに第45回国際養蜂会議 アピモンディア2017が2017年9月29日から10月04日までトルコ・イスタンブールのイスタンブール コングレス センター(ICC)で開催されます.会議ウェブサイトはhttp://apimondia2017.org/ 

日本ではあまり目立ちませんが,トルコは世界有数の養蜂大国です.

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なぜミツバチ記念硬貨を発行?

 ニュージーランドで養蜂に使われているのは海外から導入されたセイヨウミツバチです.オセアニアには旧大陸とは異なる種類の植物が多種ありますが,ミツバチは新しい土地の植物にもなじみ,ユニークで貴重な甘味を食卓にとどけました.

 ミツバチの病気予防対策や望ましい蜂群管理手順など,付加価値を高める官民一体となった進んだ養蜂技術が知られています.

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世界最初のミツバチ記念硬貨発行

 セイヨウミツバチをあしらった新硬貨の発行をニュージーランドの中央銀行であるNZ準備銀行が8月1日に発表したそうです.世界最初のミツバチ記念硬貨はもちろん六角形です.CATCH THE BUZZ 8月8日号より

 その記事がミツバチのことをとてもうまくまとめているので,ご紹介させていただきます.

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花はどこにいったの?

 大気汚染は,花粉媒介者を呼びよせるために花が放出する香気成分を変化,劣化させる.そのため昆虫が望ましい花の匂いをみつけてその花にたどり着き,花粉,花蜜を手に入れるまでの時間が増加している,という気になる研究結果が公表されました.CATCH THE BUZZ 7月17日号より

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花粉の栄養なしには III

蜂群に必要な栄養を十分供給するために,養蜂家は蜂場周囲の花粉源植物を確認してください.見ため重視の園芸植物は往々にしてミツバチの役に立たず,開花が多くても豊かな採餌先とは限りません.ある植物の花粉の多さと,ミツバチが利用できる花粉量とは必ずしも比例しません.風媒花であるマツは,タンパク質に乏しい花粉を大量に生産しますが,ミツバチが採餌に訪れない代表的な植物です.ポイントは”多様,多彩,様々”です.

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