ミツバチの健康に必要な栄養 花蜜と花粉

ミツバチが健康でいるためには他の動物と同様,バランスの取れた食物が必要です.炭水化物・糖質,タンパク質,ビタミン,ミネラル,そして水分も不可欠な栄養分です.ミツバチを取り巻く環境が急速に開発され,たくさんの多様な花々が季節ごとに咲き,危険な薬剤と遭遇することもない,ゆたかな山野の多くが失われました.養蜂家は自分が飼養する蜂群がバランス良く栄養を摂れているか,以前よりも注意するよう求められます.

花蜜はエネルギー源

 ミツバチの成長,繁殖,飛翔,コロニーの保温を支えます.養蜂における蜂群への給餌では,エネルギー源である糖分がもっとも効果的で,繁殖を促す,花粉採餌を増やす,貯蔵してあるハチミツと花粉/蜂パンの利用促進などの効果があります.糖液の給餌はミツバチに積極的な行動開始のきっかけをあたえます.一般的な流蜜期でない時期に良い蜜源が開花するなら,糖液給餌でミツバチを熱心な採餌に向かわせられますし,花粉媒介を控えた時期に体制を整える,春の早めの頃から育種を始める,女王蜂養成も早めに開始するなど,養蜂家がねらう色々な目的のために利用できます.けれども糖液給餌はあくまでも蜂群への刺激剤であり,栄養バランスの取れた食事とはいえません.

 巣房に蓄えたハチミツは最上のエネルギー源ですが,ぎりぎりに追い込まれるまでミツバチはそれに手をつけません.新鮮な花蜜が集められない蜜枯れの時期や冬期にのみ,貯蔵蜜を消費します.食糧事情が逼迫して貯蔵蜜を食べているときは,普通産卵と蜂児育成が抑制されますが,春の蜂群建勢開始時期は例外です.

花粉/タンパク質

 女王蜂が産卵し続けるためだけでなく,ミツバチの幼虫や若い成蜂の筋肉増強にもタンパク質は必須な栄養素です.そのタンパク質をミツバチは花粉から得ており,訪花先でさかんに花粉を集める蜂が大きな花粉団子を脚につけて帰巣し,巣門からいそいそと中に入るコロニーでは,女王蜂の産卵と働き蜂による育児が進んでいるのでしょう.花粉からはタンパク質だけでなく,脂質,ビタミン類,ミネラル類,そのほかミツバチの生育と健康維持に必要な栄養を摂取できます.

 次項で花粉とタンパク質について続けます.