クシュマン氏のビースペース考察 その2

 ◇7ミリの空間:ミツバチ自身ではなく人間が器材設計などの場面で有効なビースペースとして採用している.巣枠の上桟の両端と巣箱側面にこれだけの隙間が確保できれば,ミツバチがロウとプロポリスで固着しようと励むのと戦う面倒から逃れられるだろう.

 今月の写真はセイヨウミツバチ自然巣の存在を知らされて,対策にはせ参じたミツバチ研究者たちと複葉の立派な巣の様子です.密集した松葉にまもられた大きな自然巣で,このように巣板間のサイズを測る機会はめったにありません.

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クシュマン氏のビースペース考察 その1

L.L.ラングストロス師が「ビースペースを発見した」とか中には「発明した」と書いてあるものを見たことがあるが,もちろんそれらは正しくない.ミツバチ自身がビースペースを編み出したのであり,人間もそれを遙か昔から知っていた.ただそれをふまえて,巣箱での飼養にきわめて有効な方法を開発したのがラングストロス師なのだ.

http://www.dave-cushman.net/bee/bsp.html

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ビースペースと近代養蜂

ラングストロス師は1852年に最初の可動巣枠式巣箱を制作,飼養試験を開始しました.ビースペース概念をふまえた可動巣枠式巣箱と,この可動巣枠をいれた箱を積み上げる方式の巣箱の開発により,養蜂は家内工業から大規模な産業へと大きな変貌をとげて,広く豊かな国土に恵まれる米国では1800年代末までに数千群の蜂群でハチミツ生産をおこなう養蜂企業家が数名出ていたということです.

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ビースペースとは

木の幹にできた洞(うろ)など,閉鎖空間に複数の巣板を作って暮らすミツバチ(セイヨウミツバチ,ニホンミツバチをふくむトウヨウミツバチ)は,コロニーに必要な仕事をするために多数の蜂が巣板から巣板へと歩き回ります.「ビースペース bee space」とはミツバチが自然巣内で隅々まで自由に行き来できるように残しておく隙間のこと.この空間をミツバチがプロポリスをつめこんだりあらたに巣房をつくって,埋めてしまうことはほとんどありません.

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テイスティングに適した匙

ハチミツを買う前に,その味を試してみたいですか?大きなメーカーの商品はどこの商品棚に並んでいても同じ色,同じ味のハチミツが予想されるのですが,ハチミツ専門店には各地から集められた,かなり薄めの色から様々なこはく色,もっと濃いもの,また透明感があるものとないものなど,多様なハチミツが並んでいます.

色々なハチミツを食べた経験がある人なら,色だけでなく,味と香りも様々であることをご存じでしょう.そんなハチミツ試食でつかう匙についてもウースターシャー養蜂協会のM.クラックネル会長はうんちくを述べていました.

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ハチミツ試食のジレンマ

「特徴あるハチミツの味を比べるテイスティングは英国養蜂協会が1933年に始めて以来,いつでもどこでも大人気のイベントです.地元ウースターシャーのマルバーンで開催される王立園芸協会(RHS)の春のショーには毎回6万人もが集まります.ウースターシャーの多様な植物で生産されるハチミツを通して,ミツバチや植物についての啓蒙活動をするねらいで私たちもRHSのショーに参加し,ハチミツの展示即売とテイスティイングを始めたところ,思いもよらない難問,ジレンマが色々でてきたのです.」イングランド南西部,ウースターシャー養蜂協会のM.クラックネル会長がそこでの内輪話を英国養蜂協会の雑誌Bee Craft に寄稿していました.

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クマのプーさん誕生秘話

ハチミツがどんなにおいしくてすてきな食べ物かを,世界中に伝えてくれている有名なクマといえば,クマのプーさんですね.イギリスのA.A. ミルンが書いた4編の児童小説には,幼い息子クリストファーと彼のクマのぬいぐるみ,そして森の仲間たちとのゆかいなエピソードが綴られています.

ぬいぐるみではない,本物の小熊の大冒険が始まったのは1914年8月24日,カナダでのことだったと,クマのプーさん誕生秘話がつたえられました.

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Apimondia 2017 ③ 総会,2021招致立候補国,会議登録料 

原則としてアピモンディア/国際養蜂会議は欧州とそれ以外の地域とが交互に開催することになっています.ウクライナ/2013→韓国→トルコ→カナダ/2019で,2021年は欧州の番.事務局長ジャンノニ・セバスティアニーニ氏のメールでは現在立候補国はデンマーク,ロシア,セルビア,スロベニアの4カ国だそうです.あなたはどの国の養蜂事情に興味がありますか?

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Apimondia 2017 ② 見学旅行の詳細 

開催国のいろいろな事情を,各国からの参加者とともに体験できて,ミツバチ好きには忘れがたい一日になることが多い,アピモンディアの見学旅行.トルコなら全国各地,いくらでも企画できたでしょうが,現在の社会情勢を踏まえて,安全な近場が選ばれたようです.参加費用が値下げされ,ひとり75.-EURO (交通,ガイド,昼食,税込み)に.

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Apimondia 2017 第45回国際養蜂会議の開催 ①

 “2つの大陸がであう場所にミツバチと集合”をテーマに,第45回国際養蜂会議が2017年9月29日(金)から10月04日(水)までトルコ・イスタンブールのイスタンブールコングレスセンター(ICC)で開催されます.HP (http://apimondia2017.org/)やメールで届けられた最新情報をまとめました.

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サクラメントの養蜂家を百万ドル相当の巣箱窃盗容疑で逮捕 ②

写真は同じバラ科ですがサクラの仲間です.アーモンドはバラ科モモ属で,開花時に葉はまだあまり開かず,サクラより花柄がみじかい.花の中心部の紅色が濃いものが多く,枝に多数の花がびっしり並んで咲くところは一重のモモやアンズに似ています.

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サクラメントの養蜂家を百万ドル相当の巣箱窃盗容疑で逮捕 ①

米国カリフォルニア州で頻発する蜂群窃盗事件の捜査陣は,地元加州の養蜂仲間と,早春のアーモンド農園での仕事をめざして全国から集まる養蜂家のネットワークから協力を得ていました.以前に盗まれた知り合いの巣箱を,ある養蜂家の作業場で見つけたとの有力情報がこの逮捕につながったとロサンゼルスタイムズ紙が伝えます.

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南アでミツバチが国際クリケット試合に乱入

まじめな解説が続いたので,気分転換しましょう.少し前にインターネットで,グランドの芝生にうつぶせになる選手とミツバチが何とかというニュース写真を見ました.イギリスの養蜂雑誌Bee Craft がつたえるその詳細をおとどけします.

南アフリカ・ヨハネスブルグで先日行われたクリケットの国際試合で,観衆は思いがけなく養蜂家大活躍の様子をみることになりました.

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タンパク質を消費するストレス

ミツバチのタンパク質要求量はストレスの強さにより変化します.蜂群にストレスがかかっているときに,必須アミノ酸をもれなく補えるように,良質の花粉などを給餌すれば,その先の蜂群縮小を予防できるので効果的です.蜂群にかかっているストレスを理解すれば養蜂家は必要な栄養管理ができるでしょう.

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ミツバチにとってタンパク質は

ミツバチの体タンパク質量はその蜂群の越冬可能性,ハチミツ生産性,ヨーロッパ腐素病(EFB)やチョーク病など多くの蜂病への耐性をしめす目安となり得ます.耐タンパク質量のレベルが高いほど,ハチミツを多く生産でき,花粉媒介能力や女王蜂養成能力が高いのです.

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ミツバチの健康に必要な栄養 タンパク質

働き蜂が花粉を消化して体内に貯蔵していたタンパク質を,ふたたび分解して栄養豊富な濃厚な液をつくるのは,母牛が体細胞から子牛に飲ませるミルクを作るのによく似ています.

哺乳類以外で,こんな風にすぐれた食べ物を自ら造り出して,与え育てる生物はすくないでしょう.

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ミツバチの健康に必要な栄養 花蜜と花粉

ミツバチが健康でいるためには他の動物と同様,バランスの取れた食物が必要です.炭水化物・糖質,タンパク質,ビタミン,ミネラル,そして水分も不可欠な栄養分です.ミツバチを取り巻く環境が急速に開発され,たくさんの多様な花々が季節ごとに咲き,危険な薬剤と遭遇することもない,ゆたかな山野の多くが失われました.養蜂家は自分が飼養する蜂群がバランス良く栄養を摂れているか,以前よりも注意するよう求められます.

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ミツバチコロニーと女王蜂 その4

新しい女王蜂は旧女王が産んだふつうの受精卵から育ちます.ふ化後3日以内のごく若い幼虫から選ばれて,多くの仲間とは異なる道を歩み出します.

コロニーが新しい女王蜂をそだてる道筋は3通り,すなわち緊急時の変成王台,女王蜂交代,そして蜂群繁栄への王道である分蜂の準備です.

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ミツバチコロニーと女王蜂 その3

2番目に大切な女王蜂の機能は,数種のフェロモンの分泌で,この化学物質がミツバチコロニーをまとめ,協働してそれぞれの役割を果たすべく動かす,社会を束ねる働きを持っています.

”女王物質”とも呼ばれる主要なフェロモンは, 大顎腺から分泌されますが,他にも重要なフェロモンを女王蜂は出しています.

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ミツバチコロニーと女王蜂 その2

 女王蜂は通常コロニーに一匹だけです.でも例外的に分蜂や女王交代の準備時期には複数存在する時間があります.女王蜂だけが性的に成熟した雌なので,求められる第一の機能は順調な産卵.越冬を終えた春から夏の初めまでの時期には連日多数の卵を産み続け,1日に最大1500個を巣房に産み付けます.

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ミツバチコロニーと女王蜂 その1

ブログの数がふえてきたので,各ページにキーワードをつけて内容を分けてみました.右上にボタンがあります.

ミツバチの基本的なはなしのうち,これまでに働き蜂は取り上げてありましたが,女王蜂についてはまとめていなかったので,今月と来月に書き込もうとおもいます.

多数いる他の蜂とはかなり異なる一生をおくりますが,決して独裁者のように君臨統治しているわけではないんです.

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