ミツバチコロニーと女王蜂 その3

2番目に大切な女王蜂の機能は,数種のフェロモンの分泌で,この化学物質がミツバチコロニーをまとめ,協働してそれぞれの役割を果たすべく動かす,社会を束ねる働きを持っています.

”女王物質”とも呼ばれる主要なフェロモンは, 大顎腺から分泌されますが,他にも重要なフェロモンを女王蜂は出しています.

 ミツバチコロニーの質は女王蜂の産卵能力と化学物質フェロモンの生産力で決まり,彼女の遺伝的資質と,交尾した雄蜂の資質をあわせて,それらがおもに蜂群の品質,大きさ,気性の善し悪しを決定します.

 王台から生まれて約1週間後に新女王は巣から飛び立ち,雄蜂が集まる場所(DCA)に行って,飛行しながら数匹の雄と交尾します.これを交尾飛行と呼びます.近親交配を避ける自然の摂理で,女王は自群から一定距離離れた場所まで飛んでいく事になるため,巣から飛び立つとまず巣の上空で旋回して,その場所を記憶します.そしてDCAめざして一匹だけで飛んでいき,10数分後に覚えておいた自分の巣に帰ってきます.交尾飛行は普通天気の良いあたたかな午後に行われ,上空で旋回しながら7~15匹の雄蜂と交尾します.雄蜂は女王蜂の出すフェロモンを嗅ぎつけて女王を見つけ,後を追います.悪天候が続き交尾飛行が20日以上できないと交尾能力がおとろえ,無精卵しかうめなくなります.こうなると雄蜂しか生まれないので,コロニーは危機に陥ります.

 無事に交尾飛行から戻ると,女王蜂は48時間後に産卵を開始します.貯精嚢から少し精子を放出して産卵時に受精させると,その卵はやがて雌の働き蜂か女王蜂に成長.ややサイズが大きい雄蜂用の巣房には,受精なしで無精卵をうみます.女王蜂のまわりにはいつも働き蜂がいて,タンパク源であるローヤルゼリーを給餌.女王蜂がどれだけ多く産卵できるかは,働き蜂の機動力次第です.つまり彼女にローヤルゼリーをどれだけ提供できるか,働き蜂が準備できる産卵巣房の数,それと産卵から3日後に生まれる幼虫の育児にどれだけ携われるか,これらの仕事を働き蜂がこなしていく能力が高ければそれだけ,女王蜂の産卵数も大きくなるわけです.女王蜂がフェロモンを十分に分泌できなくなると,それを察知した働き蜂は女王蜂の交代準備をはじめます.新しい女王が出房したときには古い女王とその娘である新女王が2匹同時に巣の中にいるわけです.

 写真は西オーストラリアの大規模養蜂家所有の蜂群運搬車.遠くの蜂場でミツバチが飲む水用の大型タンクも装備.