ミツバチコロニーと女王蜂 その4

新しい女王蜂は旧女王が産んだふつうの受精卵から育ちます.ふ化後3日以内のごく若い幼虫から選ばれて,多くの仲間とは異なる道を歩み出します.

コロニーが新しい女王蜂をそだてる道筋は3通り,すなわち緊急時の変成王台,女王蜂交代,そして蜂群繁栄への王道である分蜂の準備です.

 先月もご案内しましたが,女王蜂の姿や働きの画像をご覧になりたい方におすすめのサイトがあります.日本養蜂協会>みつばち協議会>各種マニュアル をご覧ください.養蜂家向けと施設園芸農家向けの全部で5編のマニュアルがダウンロードできます.内容は専門的養蜂技術の解説ですが,貴重な最上級の写真が多数含まれています.

 さて話を続けます.旧女王が急に死ぬ,失踪する,あるいは養蜂家の手で除去されたときには,コロニーに女王蜂がいないことを察知した働き蜂が,ごく若い働き蜂幼虫をえらんで変成王台で育てはじめます.働き蜂の幼虫は巣板にぎっしりならぶ横向き巣房の底でわずかな餌を与えられながら育つのがですが,緊急に女王蜂を育てる場合は,望ましいまだ小さな働き蜂幼虫のいる巣房を選び,それを垂直方向にのびる王台になるよう変形拡大補強して,変成王台とします.下向きの開口部から大量のローヤルゼリーを与え,中の幼虫がローヤルゼリーの天井に浮かびながら食べ続ける状態に変えて育てていきます.

 旧女王が衰えたとき(産卵やフェロモン分泌が低下)にも,コロニーは新しい女王蜂の育成を始めます.この女王交代で育つ新女王は孵化時から良質なローヤルゼリーを大量に与えられて育つので,一般に変成王台育ちの女王より優れた蜂になります.緊急時の変成王台と同様に, 女王交代用の王台もふつう巣板上に造られます.一方,分蜂準備でつくられる王台は巣枠の下端付近にいくつか造られることが多いのです.

 私たちが健康のために利用するローヤルゼリーは人工的につくった王台のもと(王椀)を多数取り付けた専用巣枠を巣箱に預けて生産されます.ごく若い幼虫を王椀の中に入れておくと働き蜂はそれを王台に作り上げ,中の幼虫に大量のローヤルゼリーを与えます.幼虫が育ちすぎるとローヤルゼリーをもりもり食べてしまうようになるので,なるべく多く貯まっている日を割り出して,採集します.