季節変化とミツバチコロニーの活動 2-冬

気温が14℃くらいに下がると,ミツバチはそれまでより密に集合し,蜂球を作ります.ミツバチが発する熱により,蜂球内部の巣板では蜂児(卵,幼虫,蛹)が34℃ほどに暖かく守られています.女王蜂の産卵は徐々に減り,10月か11月には,まだ巣板に花粉が蓄えられていても,完全に止まり女王蜂の体はほっそり.寒い冬はコロニーが蓄えと仲間をたよりに生き延びる厳しい我慢の時間です.一方,寒くならない亜熱帯,熱帯地域や冬も穏やかな気候の地域では,女王蜂の産卵と蜂児の生育が休みなく続きます.

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季節変化とミツバチコロニーの活動 1-秋

蜂群の活動は季節に応じてかわり,9月から12月がミツバチコロニーの新年といえるでしょう.秋に多くの若い蜂をえて,たくさんのハチミツと花粉を蓄えられるかどうか.この時期の状態が1月以降の蜂群の盛衰の鍵を握ります.

アメリカのMAARECは私が頼りにしている尊敬すべき情報源のひとつで,今回はその充実した記事のほんの一部をご紹介します.

https://agdev.anr.udel.edu/maarec/honey-bee-biology/

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要旨提出システム

前回2015年韓国大田でのアピモンディアでは,アジア養蜂研究協会(AAA)大会,国際昆虫学会と,大規模な国際会議主催の経験を重ねた韓国の中堅研究者が,学術プログラムの運営に采配をふるっていました.そういえば閉会式での報告にはとても具体的な提案が含まれていて,すごいなあと思いました.それらがこの2017イスタンブールの要旨提出要項の内容に反映されているように思います.

新しい要旨提出期限にご注意ください.

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アピモンディア2017発表要旨提出要項

2017年9月開催アピモンディア2017の,要旨提出に関する詳細がアップされました.要旨がどのように評価・採用されるのか,新らたにその基準が公表されています.ほかにも,過去の会議で問題になった事例をふまえたのか,会議の発表申し込みに関連する,ありそうなルール違反やクレームに対して,あらかじめ「それは認めない」と明示しているところに,会議運営のご苦労がうかがえます.

提出期限が2017年5月1日にかわりました.

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Apimondia 2017発表募集トピック

ミツバチ生物学,養蜂技術と品質,養蜂経済,ミツバチの健康,花粉媒介と養蜂資源,村落開発養蜂,そしてアピセラピーの7つのアピモンディア科学委員会が,多岐にわたる学術研究や養蜂活動などの発表や討論会をおこないます.各委員会の発表募集トピックが提示されましたが,そこには現在の養蜂が直面する様々な問題が網羅された感があります.発表要旨提出期限は2017年3月1日ですが,提出に関する詳細はまだわかりません.http://www.apimondia2017.org

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アピモンディア2017まであと1年

“2つの大陸がであう所にミツバチと集合”をテーマに第45回国際養蜂会議 アピモンディア2017が2017年9月29日から10月04日までトルコ・イスタンブールのイスタンブール コングレス センター(ICC)で開催されます.会議ウェブサイトはhttp://apimondia2017.org/ 

日本ではあまり目立ちませんが,トルコは世界有数の養蜂大国です.

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なぜミツバチ記念硬貨を発行?

 ニュージーランドで養蜂に使われているのは海外から導入されたセイヨウミツバチです.オセアニアには旧大陸とは異なる種類の植物が多種ありますが,ミツバチは新しい土地の植物にもなじみ,ユニークで貴重な甘味を食卓にとどけました.

 ミツバチの病気予防対策や望ましい蜂群管理手順など,付加価値を高める官民一体となった進んだ養蜂技術が知られています.

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世界最初のミツバチ記念硬貨発行

 セイヨウミツバチをあしらった新硬貨の発行をニュージーランドの中央銀行であるNZ準備銀行が8月1日に発表したそうです.世界最初のミツバチ記念硬貨はもちろん六角形です.CATCH THE BUZZ 8月8日号より

 その記事がミツバチのことをとてもうまくまとめているので,ご紹介させていただきます.

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花はどこにいったの?

 大気汚染は,花粉媒介者を呼びよせるために花が放出する香気成分を変化,劣化させる.そのため昆虫が望ましい花の匂いをみつけてその花にたどり着き,花粉,花蜜を手に入れるまでの時間が増加している,という気になる研究結果が公表されました.CATCH THE BUZZ 7月17日号より

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花粉の栄養なしには III

蜂群に必要な栄養を十分供給するために,養蜂家は蜂場周囲の花粉源植物を確認してください.見ため重視の園芸植物は往々にしてミツバチの役に立たず,開花が多くても豊かな採餌先とは限りません.ある植物の花粉の多さと,ミツバチが利用できる花粉量とは必ずしも比例しません.風媒花であるマツは,タンパク質に乏しい花粉を大量に生産しますが,ミツバチが採餌に訪れない代表的な植物です.ポイントは”多様,多彩,様々”です.

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花粉の栄養なしには II

花粉から得られるタンパク質は蜂群の生育に不可欠ですが,花粉が提供するタンパク質の量は種によって,花粉乾燥重の6%-30%と大きく差があります.タンパク質を構成するアミノ酸のうちトレオニンなど10種がミツバチに必須とわかっていますが,花粉中のアミノ酸量と種類もまた花の種類によって様々.どんな種類の花粉でもミツバチに同じだけの栄養を与えるわけではないのです.

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花粉の栄養なしには I

ミツバチが必要な栄養素は基本的に人間と類似しています;すなわちタンパク質(アミノ酸),炭水化物(糖類),ミネラル,脂肪/脂質(脂肪酸),ビタミン,そして水分です.自分のコロニーが求めるこれらの栄養を確保するために,ミツバチは開花中の植物に飛んでいき,花蜜と花粉を,また様々な水源から水分を集めてきます.

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チェルノブイリ:ある養蜂家の体験 その2

2011年3月の東北地方太平洋沖地震と津波により福島第一原子力発電所事故が起きたとき,当時の勤務先に英国の養蜂誌編集長からお見舞いと,福島のミツバチについての問い合わせをうけました.欧州にはチェルノブイリ原発事故当時に各国の養蜂関係者が収集・分析したミツバチと放射能に関するデータがある.参考になればと送らせてもらうとの申し出も.原発事故がすでに他人ごとではなかったのですね.

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チェルノブイリ:ある養蜂家の体験 その1

 今から30年前,1986年4月26日にチェルノブイリ原発事故が起きました.まきちらされた放射性物質は今日も周辺地域を汚染し続けています.つよい放射能により,ミツバチなどの花粉媒介者は減り,果実は実りにくくなり,樹木も減る.環境変化は事故から20年後,25年後でもみられると研究者は報告しています.ミツバチは事故直後から異常があることを知っていたという養蜂家がいます.

 フェイスブックのEthnobeeologyから4月26日 15:30 に配信された記事です.

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ハチミツ品評会 その3

2012年マレーシア,クアラトレンガヌでのアジア養蜂研究協会大会に付随して,アジアの多様なハチミツを評価するために,本格的ハチミツ審査法をまなぶワークショップが有名講師を招いてひらかれ,わたしも参加しました,事前に講師からワークショップでの基準ハチミツとなる,よく知られた蜜源のハチミツ1kgを入手できないかとの依頼を受けて,小田原・高橋橘蜂園のミカンハチミツを提供しました.

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ハチミツ品評会 その2

品評会では液体ハチミツ,クリームハチミツ,巣蜜入りハチミツ,巣蜜など多数の部門が用意され,より多くの養蜂家が出品参加できるよう配慮されています.審査員への注意に,「サンプルをとるとき出品物を損なわぬこと.出品者は別の品評会にもこれで応募したいかもしれない.クリームハチミツでは容器の端からサンプルをとり,巣蜜でも切り口の巣房を1,2個取ること.出品物にこのような慎重なサンプリングの跡があっても審査上は無視する.ハチミツを口に運ぶときはガラス棒を使い,指の活用は慎む」など実際的で愉快です.

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ハチミツ品評会 その1

農家が丹精込めてつくった自慢の農産物を一堂に集めて、展示する農産物品評会は人気がありますね.養蜂家もその年とれたハチミツの品評会を開きます.養蜂雑誌にあった,米国南部にすむ趣味養蜂家の女性がイギリスのナショナルハニーショウに出品参加し,自慢のハチミツを会場の担当者にゆだねるまでのゆかいな苦心談を読んでから,大変秩序だったハチミツ品評審査の方法にわたしは興味をもちました. 

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ミツバチからの贈り物- ハチミツ その5 ミツバチのはたらき

ミツバチはどんな花のみつが好きなのでしょう?基本的には糖度が高いほど,また巣から近いほどのぞましく,さらに一回にたくさん集められることや,ミツバチが蜜をあつめやすい構造の花が評価されます.ダンス情報でこれから飛んでいこうとする採餌先の距離を知ると,蜜胃の中に採餌先までの飛行に燃料として必要なだけのハチミツを入れて外勤蜂は巣から飛び出します.

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ミツバチからの贈り物- ハチミツ その4 ミツバチのはたらき

ハチミツはミツバチが花蜜からつくります(一部例外もあります).巣箱内では多数の働き蜂がブーンと低い音を響かせながらいろいろな仕事をしていて,外から持ち込まれた花蜜もしだいに熟成したハチミツへと変化します.働きバチ1匹がその一生のあいだにつくるハチミツは茶さじ半分程度.たくさんのハチが営々と働いて,コロニー内にハチミツを貯めていくのです.

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ミツバチからの贈り物 - ハチミツ その3 まだエジプトのはなし

 ハチミツは古代エジプトでもっとも使われた医療素材で,さまざまなハチミツ利用法が記録され今日まで伝わっています.

 神殿でミツバチが飼われハチミツを神饌として捧げ,薬や軟膏を作りました.甘いハチミツは,むかつくひどい味の薬効成分を何とか我慢して服用できるように変えるほとんど唯一の成分として,医薬に広く使われたのでしょう.

 

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ミツバチからの贈り物 - ハチミツ その2 エジプトのはなし

古代エジプトでミツバチは太陽神ラーの涙だと考えられました.大英博物館にあるパピルスには「ラー神の涙が地上に落ち,ミツバチに姿を変えた.ミツバチはその巣を造り,あらゆる種類の花を忙しく訪れた.そしてロウが作り出され,ハチミツもラー神の涙から創造されたのだ」とあるそうです.

図の上部中央に下エジプトを示すミツバチのヒエログリフがあります.

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ミツバチからの贈り物- ハチミツ その1 大昔のはなし

いつの時代もハチミツの濃厚な甘さを人々は求めました.よく知られるスペイン,アラーニャの洞窟壁画は紀元前6000年頃に描かれました.アフリカ大陸の南部,ジンバブエにもミツバチの巣からハチミツを「採集」する姿をえがく古い壁画がたくさん残っています.氷河期がおわり気候が温暖・湿潤化したことにより森林が拡大し,人々が草原にそだつ野生の大麦,小麦などの植物を利用する技術をおぼえて,農耕や牧畜が始まった新石器時代です.

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