花粉の栄養なしには I

ミツバチが必要な栄養素は基本的に人間と類似しています;すなわちタンパク質(アミノ酸),炭水化物(糖類),ミネラル,脂肪/脂質(脂肪酸),ビタミン,そして水分です.自分のコロニーが求めるこれらの栄養を確保するために,ミツバチは開花中の植物に飛んでいき,花蜜と花粉を,また様々な水源から水分を集めてきます.

 ミツバチの食糧は加工された花蜜(ハチミツ)と花粉(蜂パン)で,どちらも花が提供するものです.花蜜はハナバチ類の主要炭水化物源で,ミツバチは自分たちで加工したハチミツのかたちで摂取します.飛行,コロニー維持,その他すべての日常活動に必要なエネルギーの源なので,仮に新たな花蜜源がなく,巣内に貯蔵したハチミツが底をついたなら,蜂群はあっというまに飢餓状態に陥り2,3日で壊滅してしまいます.花蜜にはカルシウム,銅,リン,マグネシウム,ナトリウムなどいろいろなミネラルも含まれ,花の種類によりミネラルの種類や量は異なります.

 蜂パンとは,巣に持ち帰った花粉を巣房に詰め込んだものをいい,これがミツバチの主要タンパク質源となります.脂肪/脂質,ミネラル類,ビタミン類もハチパンから摂取します.花粉からとるタンパク質は産卵,蜂児育成と若い蜂の生育に不可欠です.花粉はミツバチが利用する食糧源ではもっとも栄養成分が多彩で,水分(7-16%);粗タンパク質(6-30%);還元糖類を含む炭水化物(19%-41%),非還元糖(0-9%),デンプン(0-11%);脂質(5%);灰分(1-6%)などです.

 植物が違えば,花粉の成分割合は異なり,どんな種類の花粉でもミツバチに同じだけの栄養を与えるわけではありません.