ミツバチは人と自然に,いろいろな贈り物をくれています.筆頭はなんといってもハチミツですが,その次に古くから重要だったミツバチ生産物が,蜂ロウです.
日本では蜜ろうとも言いますが,ここでは英語のBeeswaxにあわせて,蜂ロウを使います.
越冬中の巣ではお互いに温めあう多数の仲間と,秋に巣内に貯えたハチミツと花粉が頼りです.無駄なエネルギーを消費すれば,蓄えが底をつく蜜切れとなって,春先に女王蜂が産卵を再開し,ウメや菜の花が咲きだす前に,コロニー全体が飢え死にしてしまう危険があります.
ずいぶん寒くなりましたね.ミツバチも寒さは苦手です.変温動物なので冷えると体が麻痺して動けなくなってしまうのです.それでもセイヨウミツバチとトウヨウミツバチは,巣の中で恒温動物のように一定の温かさを保ったまま,冬を乗り切ります.
ミツバチは社会性昆虫です.2万匹以上もいるコロニーは,一匹の女王蜂,夏ごろに1割くらいみられる雄蜂,大多数の働き蜂(メス)から成り立ちます.コロニーを支える働き蜂は,越冬時期をのぞき一か月間ほどの一生を,成虫になってからの日齢に応じて仕事内容を変える分業体制で働きます.巣房の掃除,育児,女王蜂の世話,食糧貯蔵,巣板の維持管理,巣内の環境調整,門番,食糧や水などの調達,これらの分業は巣箱内で働く「内勤」と外に飛び出す「外勤」に大別され,働き蜂体内の生理的変化と関係しています
ミツバチの食糧と栄養サミットが10月20-21日に開催され,主催した米国農務省はミツバチの健康におよぼす,栄養と利用可能な食糧との相互作用に関わる諸問題について,養蜂家など利害関係者からの意見を求めました.
CATCH THE BUZZ 2014年10月25日配信
ビークラフト誌9月号によると,英国政府,環境・食料・農村地域省(Defra)担当大臣ディ・モーリー卿が「ハナバチ類に必要なもの Bees’ Needs」キャンペーンの開始を宣言しました.英国内には少なくとも1500種の送粉昆虫がいて,26種のマルハナバチ,260種の単性の蜂,セイヨウミツバチ,さらに何百タイプものハナアブ,甲虫,蝶やガが含まれます.
10月に韓国で開かれたCOP12(国連気候変動枠組条約第12回締約国会議)に国連食糧農業機関(FAO)が,ミツバチなど花粉を運ぶ昆虫は農作物の生産量増加や質の向上に大きな役割を果たす一方で,各国で生息状況の悪化が目立ち,保護対策が急務だとする報告書を寄せました.
野生のセイヨウミツバチはアフリカ南端からスカンジナビアまで,熱帯から寒地まで広域に分布しています.人為的に導入された南北アメリカ大陸やオーストラリアでもセイヨウミツバチは野生化して,分布域を広げていきました.
ところが日本では,明治時代にアメリカから導入された後,既に長い年月が経っていますが,セイヨウミツバチは野生化していません.それはなぜか?
私の手元に昭和31年発行の玉川こども百科(全100巻)の第61巻「みつばち」があります.戦後生まれの子供たちで小学校がパンクしていた頃,学校図書としてミツバチの不思議と養蜂のわざを伝えようと,100ページ余りの本には大量の写真やイラストが盛り込まれました.ミツバチの種類について当時はこう書かれています:
英国養蜂家協会
Bee Craftは英国養蜂家協会(BBKA)発行の月刊誌です.10年前の紙面は編集長の記事,経験豊かな老人による養蜂技術コラムと回顧記事,地域養蜂組織活動の報告などが主でした.2009年,英国でも多数の蜂群が越冬できず,窮地に立たされたBBKAの養蜂家は.ロンドンの国会に向けて「ミツバチを救え!」とデモ行進を行いました.
国土が小さい英国に,米国やオーストラリア,アルゼンチンのような大規模養蜂企業はありませんが,趣味養蜂の伝統は脈々と受け継がれています.シャーロック・ホームズが1903年にロンドンのベーカー街からサセックス丘陵の田舎に引っこみ,ミツバチを飼って晴耕雨読の暮らしをしたという話は有名ですね.
米国では2006年に."ポリネーター(送粉/花粉媒介者)が生態系の健全さと農業/食糧安全保障に対してもつ重要性を認識するための『ポリネーターウィーク』“を合衆国上院が創設し,それ以来ポリネーターの保全,教育,研究活動組織がつくられ,この時期に教育的な催しを開催する各州や地域の団体が増えています.
ある区画にいろいろな種類の蜜源植物が一斉に開花していたとしても,そこに飛来した一匹のミツバチが再び巣に戻るまでの間に訪花するのは,1種類の植物だけにほぼ限られ,ほかの植物は無視されます."花への忠誠“とよばれるこの行動故に,ミツバチはその辺にいるほかのどんな昆虫にも勝る,優れた花粉媒介者となっているのです.
ハナバチ類(膜翅目昆虫)は花から蜜と花粉を集めて幼虫の餌とするハチの仲間です.高度に社会生活を発達させたミツバチを頂点として,全世界で2万種以上が知られ,日本には約400種のハナバチがいます.透明な翅を4枚もっていて,翅が2枚しかないハエ・アブのグループから簡単に区別できます.
日本には2種のミツバチがいます.一般的な養蜂はセイヨウミツバチを使いますが,ほかに野生のニホンミツバチがいて,これを巣箱に飼う人もいます.自由に飛び回っていますが巣箱で飼われているミツバチは家畜で,農林水産省生産局畜産部畜産振興課に飼育の届けをすることになっており,諸統計の対象となります.
ミツバチといえば,まずは花の蜜からつくるハチミツですね.花蜜の主成分はショ糖ですが,巣に持ち帰って貯めるときには,ブドウ糖と果糖に分解して,水分を減らしてハチミツを完成します.自分の食糧としてだけでなく,巣仲間の蜂や幼虫のために,また花の少ない季節や冬に備えて蓄えるのです,
地球上で私たち人類より300万年以上先輩にあたるミツバチを追い詰めているものは何でしょう? 「ミツバチが減っている」とよく報道されますが,国内のセイヨウミツバチは微増しています.
ミツバチは今から500万年前にすでにハチミツを作っていました.人類より300万年も長くこの地球で暮らしている昆虫です.花から花へ飛び回って蜜と花粉をもらい,かわりに花の受粉を助けて,ミツバチと植物は互いに持続可能な,生命の再生産を支える生態を確立してきました.