働き蜂の仕事 ミツバチの分業

ミツバチは社会性昆虫です.2万匹以上もいるコロニーは,一匹の女王蜂,夏ごろに1割くらいみられる雄蜂,大多数の働き蜂(メス)から成り立ちます.コロニーを支える働き蜂は,越冬時期をのぞき一か月間ほどの一生を,成虫になってからの日齢に応じて仕事内容を変える分業体制で働きます.巣房の掃除,育児,女王蜂の世話,食糧貯蔵,巣板の維持管理,巣内の環境調整,門番,食糧や水などの調達,これらの分業は巣箱内で働く「内勤」と外に飛び出す「外勤」に大別され,働き蜂体内の生理的変化と関係しています

 暗いけれど温かさが保たれる巣の中心部で羽化した若い蜂は5日程度まで,その近辺で巣房の掃除をします.花粉を食べると,頭部にある2種類の分泌腺が発達しミルクを分泌するようになり,3-12日齢で育児蜂となります.大多数である働き蜂幼虫はミルクはほんの数日だけで,主に花粉やハチミツを与えられますが,王台内の幼虫は大量のローヤルゼリーを食べ続け,やがて女王蜂になります.育児蜂は成蜂の女王蜂にもローヤルゼリーを与えます.

 8-16日齢の働き蜂は腹部のロウ腺が発達し,蜂ロウを分泌して巣を造ります.幼虫が蛹になるとき巣房にかける蓋も蜂ロウで作ります.12-18日齢になるとα-グルコシダーゼという酵素が分泌されるようになり,貯蜜係に転職,外勤蜂が集めた花蜜を受け取り,巣房に貯えます.さらに花蜜の水分を減らすため口を使って濃縮作業をしますが,その間に唾液中の酵素が混入し,花蜜のショ糖がブトウ糖と果糖に分解されてハチミツが完成します.16-24日齢では内勤と外勤の境界線,巣門付近の見張り番として,ほかの巣から蜜を盗みに来た蜂や外敵を監視,迎撃します.

 20日齢以降は外勤蜂として巣の外に飛び出して,明るく広い空を飛び回って花粉,花蜜,巣内の温度調節や濃い貯蔵ハチミツを薄めるための水,巣の補強と衛生管理に使うプロポリスの採集に努めます.巣外には多くの危険がありますが,一番日齢の進んだものが携わることで,コロニー全体として働き蜂が減りにくい分業構造になっているのです.

 これは春や秋の標準的な分業の進行です.分業の日齢は季節や群の状態,仕事量の変化などにより大きく変わることがあります.