ミツバチの冬は寒さとの戦い  その1

ずいぶん寒くなりましたね.ミツバチも寒さは苦手です.変温動物なので冷えると体が麻痺して動けなくなってしまうのです.それでもセイヨウミツバチとトウヨウミツバチは,巣の中で恒温動物のように一定の温かさを保ったまま,冬を乗り切ります.

  熱帯アジアを中心に世界に数種いるミツバチの中で,セイヨウミツバチとトウヨウミツバチ(ニホンミツバチはその1亜種)だけが複数の巣板を作り,閉鎖空間に営巣します.外壁で寒い風を防ぎ,貯蔵したハチミツを燃料として閉じられた空間内の温度を暖かく保っていくことで,ずいぶん寒い地域でも越冬できるようになり,この2種のミツバチは生息地域を大きく広げました.

  冬以外の活動時期には,巣箱に何枚もの巣板が入っていて,2~3万匹の蜂がいます.その中央部の育児圏は温度がいつも34~35℃に保たれており,女王蜂が巣房に産卵し,育児蜂は幼虫に餌を与え世話をしています.やがて幼虫の巣房にふたがされて中でさなぎに変身.産卵から21日後に羽化して成虫となり,ふたを破って巣房から出たら働き蜂としての日々の仕事を開始します.前回の日齢による分業で見たように,それまで過ごしてきた暖かな育児圏での掃除からはじめ,しだいに温度が下がる巣箱の外側での様々な仕事にシフトしていくわけです.

  一方,越冬中の群は女王蜂が産卵を止めるので夏の最盛期と比べ1/3以下の数に縮小します.雄蜂はすでに巣から追い出されて残っていません.活動期の働き蜂の寿命は約一月ですが,秋に育った働き蜂は5か月程度生きのびて,秋に越冬用の食糧をせっせと巣に貯え,冬はこれを消費しながら寒さに耐え,早春に女王蜂が再び産卵を開始したときには育児に必要な花粉や花蜜を集め,新たな働き蜂が誕生してくるところまで頑張ります.

 養蜂家が飼養する群では秋のうちに巣箱内の巣板をへらしたり,複数の群を一つにまとめるなどして,ミツバチが巣板上に密集するように調整,花粉とハチミツも十分蓄えられるように注意します.