ミツバチの食糧と栄養サミットで意見陳述(米国)

ミツバチの食糧と栄養サミットが10月20-21日に開催され,主催した米国農務省はミツバチの健康におよぼす,栄養と利用可能な食糧との相互作用に関わる諸問題について,養蜂家など利害関係者からの意見を求めました.

CATCH THE BUZZ 2014年10月25日配信

はじめに米国のハチミツ生産が史上最低の生産高に落ち込んだこと,原因としてバイオ燃料向けの大豆とトウモロコシの作付面積は増加し,農務省の環境保護対策である保全休耕プログラム(CRP)を適用する土地は面積も質も低下しており,生息適地が失われたミツバチの生息状況は非常に悪化していることが挙げられました.さらに除草剤使用の増加や,効率ばかりを優先させた農業生産工程,そして殺虫剤使用に起因する様々な制約,これらすべてがミツバチの利用できる採餌先を減少させて,農業を支える主軸であるミツバチは大打撃を受けており.ミツバチを農作物生産現場に送り届ける優れたシステムである養蜂家も非常な困難に直面しているのだと説明されました.ミツバチが健康を維持し,現在大きな問題となっている害敵,蜂病,そして農薬被爆の衝撃を乗り越えるためにも,栄養が重要な役割をはたすことを示す一連の発表もありました.

養蜂家は優良で安全な生息適地として,国が管理する公共用地に蜂群を持ち込む条件の緩和に期待していました.しかし米国の広大な土地を管理下に置く国防省の担当者は欠席,国立公園局は敷地を手つかずに保つことを望み,土地管理局と林野局は蜂群設置場所についてケースバイケースで対応するとしたけれども,実情は各地事務所の85%が,蜂場許可証を発行するか否かすら未定とのことです.オバマ米大統領は6月20日付で,食糧安全保障に不可欠なミツバチなどの減少を食い止めるため,関係省庁で組織する作業部会を設置し,原因の究明や保護対策に乗り出すと発表しました.ホワイトハウス主導の先進的取り組みが,公共用地の門をミツバチのために開けてくれるはずではなかったか.

植栽植物の種類や土地利用を決定する際に,自分たちもその議論に加えるよう養蜂家は求めました.焦点になっているのはイエロー・スイート・クローバー/シナガワハギで,地方レベルの行政機関が外来生物種としてこれを規制対象にしたことへの強い疑念が呈されました.日本でも以前ニセアカシアで,同様の外来生物種騒ぎが起きています.スイートクローバーは低コストな植物で,ミツバチが大変好み,彼らの健康に寄与する.近年の集約的土地利用状況下でミツバチは,道端や水路わきのような,人間が利用しにくいわずかな土地に大きく依存している,全米にすでに分布しているこの植物をなぜいまさら駆除せよというのか?道端や排水溝わきに生えるミツバチに残されたかけがえのない食糧であるスィート・クローバーを除草剤散布が奪ってしまう,ミツバチは危機に瀕している.私たちは今すぐスィート・クローバーが必要である,と養蜂家たちは主張しました.

より健全な環境の創出という目標にふさわしい,高品質な花蜜源,花粉源植物を探し出すことがもとめられます.ミツバチと養蜂家の命をつなごうとするならば,良好な採餌機会を増やすことが先決であり.そのためには低価格種子ミックスの商品開発や,直接ポリネーションサービスを必要としていない土地であっても,その所有者がミツバチの土地利用を認めやすくなる奨励策が求められます.ミツバチコロニーが生きのびるためには最低限でも年間90kgのハチミツと18kgの花粉が必要ですが,ミツバチと養蜂家,彼らがつくるハチミツ,そしてミツバチの花粉媒介に依存する90種以上の農作物,これらすべてを排水溝の周りに咲くわずかな花だけでまかない,生きのびさせるのは不可能なことなのです.