健康なミツバチ,幸せなミツバチの養蜂 2

地球上で私たち人類より300万年以上先輩にあたるミツバチを追い詰めているものは何でしょう? 「ミツバチが減っている」とよく報道されますが,国内のセイヨウミツバチは微増しています.

 養蜂業は産業ですから,その産業の状況で飼養される蜂群数は増減します.「減っている」という誤解が生まれた背景は,日本で数年前に農作物の花粉媒介用需要が伸びている女王蜂の輸入が急にストップして,施設園芸などの受粉現場で蜂不足となり受粉作業が滞ったことと,米国などでのCCD(蜂群崩壊症候群)の報道が偶然重なったためです.

 

本当に減っているのは,ミツバチが必要な花蜜と花粉を提供してくれる,養蜂植物の植栽面積です.経済発展に伴って土地の開発が進み,自然環境が激変.野山で少なくなった花を農作物に求めて農地へ行けば,農薬との接点が多くなり,影響を受けざるを得ません.その農地での耕作状態も大きく変化し,昭和30年代に較べ,かつての主要な蜜源の栽培面積はレンゲで28.8%,菜種ではわずか3.4%にまで激減しました.ハチミツの生産が難しくなり養蜂家の数が減り,飼育されるミツバチも減っていく.一方,農産物の花粉交配はミツバチ頼み.需要に応えるため無理な形で働き,弱っていくミツバチたち….近年みられるミツバチの病気,ダニ,農薬の問題の根底には資源,すなわちミツバチが必要とする花蜜と花粉を供給する花の不足があるはずです.改正された養蜂振興法は,『国及び地方公共団体は,蜜源植物の保護及び増殖に関し,必要な施策を講ずる』ことを求めています.


私たちの暮らし方が大きく変化したため,ミツバチを取り巻く状況は厳しさを増しており,ミツバチがミツバチらしい生を全うできる「幸せなミツバチ」が減っているのです.

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