養蜂植物

ハナバチ類(膜翅目昆虫)は花から蜜と花粉を集めて幼虫の餌とするハチの仲間です.高度に社会生活を発達させたミツバチを頂点として,全世界で2万種以上が知られ,日本には約400種のハナバチがいます.透明な翅を4枚もっていて,翅が2枚しかないハエ・アブのグループから簡単に区別できます.

花との密接な関係

ミツバチに代表されるハナバチ類は,花との結びつきが強い昆虫です.働き蜂は,幼虫の餌として花粉と蜜,そして自分と巣仲間の餌として蜜を,花から集めて巣に持ち帰ります.一旦決めると,その花ばかり繰り返し訪れる性質をもち,花粉を体につけて運びます.これは花の受粉にとって好都合な性質であり,たくさんの植物が甘い蜜でミツバチなどのハナバチを引き寄せて,かれらに花粉を託して受粉を行っています.「養蜂植物」とはミツバチ群の生育に役立つ植物をさしますが,格別特徴的なかたちや色はありません.さまざまな色,形,大きさの花がミツバチに訪れてもらい,花粉媒介してくれるのを待って咲いています.

植物資源

ミツバチを飼養するとき,蜂場の周囲には,ミツバチが利用できる開花中の良好な植物資源,すなわち「養蜂植物」が必要です.20144月,PLOS ONE誌に掲載された英国の研究論文によると;ミツバチが直面する困難のひとつは,土地利用形態が変化して,花が豊かに咲く土地が減少した問題である.どの時期に開花する花を補うのが最も効果的か,ミツバチの8の字ダンスを利用して,食糧調達状況を調べた.その結果,平均採餌飛行距離と探索範囲は春季に比べ,夏季は有意に増加しており,しかもそこで得られた花蜜の糖度は低かった.秋季になると数値は再び減少した.ミツバチは必要に迫られない限り,遠くまで採餌に出かけないので,この結果から夏季は食糧調達がもっとも困難な時期であり,春や秋に比べそれぞれ22倍,6倍の範囲を探索していることが分かった,とのことです.

6月には同誌に,日本の植物絶滅速度が世界の23倍であり,日本列島の植物保全は急務であるとの研究が報告されました.日本の野山や里を飛び回るミツバチが夏にも十分な訪花先を見つけ,巣仲間を元気にリクルートできるよう,養蜂に関わる人々は心を配ります,

   
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