英国養蜂家協会 越冬蜂群調査

英国養蜂家協会

Bee Craftは英国養蜂家協会(BBKA)発行の月刊誌です.10年前の紙面は編集長の記事,経験豊かな老人による養蜂技術コラムと回顧記事,地域養蜂組織活動の報告などが主でした.2009年,英国でも多数の蜂群が越冬できず,窮地に立たされたBBKAの養蜂家は.ロンドンの国会に向けて「ミツバチを救え!」とデモ行進を行いました.

ミツバチの花粉媒介が食用作物生産と環境保全に不可欠であり,英国で彼らが急速に減少している緊急事態の対策として,ミツバチの健康にかかわる科学研究にもっと政府予算をつけよ,と要求,これをマスコミは大きく取り上げました.国公立の研究所や大学でミツバチを研究するポジションが以前に比べてかなり減少していたのです.
野生昆虫の生息数が日本と比べはるかに少ない英国で,ポリネーター昆虫の減少は以前から報告されていました.ミツバチまでが越冬できずに減少との報道に,それが国内の食糧生産に対してどれほど危険なことか,日ごろ植物に親しんでいるガーデニング大国の人々は,速やかに認識できました.ミツバチ,マルハナバチなどのハナバチ類についてもっと学び,かれらが生息できる環境を広げよう,営巣場所や採餌先を提供しようと無数のイベントが開かれました.ポリネーターに役に立つガーデニング指針を提示し,各地の広大な私有庭園をミツバチに開放してもらう運動を行ったThe Women’s  Instituteなど多様な慈善団体や,ロンドン,リバプールなど都市中心部での屋上養蜂から村落地域での村おこし養蜂,若手養蜂家育成につながる学校養蜂など,あらたに養蜂に取り組む人々でBBKA入会者は急増,その活動は今や大発展を遂げて,Bee Craft誌も毎号とても充実しています.

越冬蜂群調査
Bee Craft誌7月号でBBKAが行った2013年/14年の越冬蜂群調査が報告されました.「越冬蜂群調査はBBKA会員を対象に7年前から毎年行われ,10月1日から翌年3月31日までの冬季に生きのびた飼養蜂群数を集計している.イングランドの蜂群越冬率は前年度に比べ大いに改善.最悪の冬だった前年度は4割近くの群が失われたが,今年度の損失は1割程度に収まり,イングランド全地域で生存率が上昇した. 2013年/14年の冬は前年度より格段におだやかであったから,それは蜂群の生存に間違いなく寄与したはずである.しかしながら,確かに重要であるけれど,天候は蜂群が冬季を生き抜く能力に対し,色々な程度で影響を及ぼす,複数の要因の一つなのである.
ミツバチの採餌先はまだ十分確保できていないが,BBKAはthe National Pollinator Strategy(英国の花粉媒介者保全作戦計画)がこの方面で次第に効果を上げてくることを願う.興味深いことは,本調査は農薬使用の一時停止措置発効に先立ち,ミツバチがネオニコチノイドで処理された農作物に接触していた時期を対象にしている点である.野外でのミツバチに対するネオニコチノイド類の実際の影響調査をさらに注目していきたいが,BBKAは同時に, ネオニコチノイド類使用の一時停止措置により,農家が選択せざるを得なくなると思われる,作物への農薬散布の増加に対しても,懸念を持っている.」とまとめていました.
日本でも農薬の空中散布によるミツバチの被害がでる季節です.農業生産に不可欠となりつつある花粉媒介昆虫を,殺虫剤との無用な遭遇から守るための,システムづくりが急がれます.

   
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