ミツバチからの贈り物 -  蜂ロウ その1

 ミツバチは人と自然に,いろいろな贈り物をくれています.筆頭はなんといってもハチミツですが,その次に古くから重要だったミツバチ生産物が,蜂ロウです.

 日本では蜜ろうとも言いますが,ここでは英語のBeeswaxにあわせて,蜂ロウを使います.

 昼間が一年で最も短いこの時期には,暗闇を照らす明かりがひときわ魅力的.今年はLEDライトが注目を集めましたが,大昔から20世紀に電灯が一般化するまで,世界各地で各種の脂肪やワックスを固めたロウソクがひろく使われていました.蜂ロウ製のロウソクは古代エジプトやギリシャ・ローマで,また古代中国でも後漢の時代には使われた記録があります.

 キリスト教社会ではローマ帝国の国教となった紀元4世紀に早くも,教会内で蜂ロウ100%のロウソクだけを使うようにと定められました.その教会法は現在でも有効で,蜂ロウ入りのロウソクがバチカンのサンピエトロ大聖堂をはじめとしたカソリックの教会で灯され続けています.ただし地域の事情にあわせて,蜂ロウの割合は5~50%と異なるそうです.プロテスタントの教会でも12月の待降節には4本のロウソクを毎週灯していき,クリスマスを迎える心の準備をします.

 蜂ロウのロウソクは美しい炎色で安定して燃えます.昔安価な材料として広く使われた獣脂などのものよりも,ゆっくり長時間燃焼しつづけ,しかも悪いにおいはなく,出るススの量がはるかに少ないという,優れた特徴があります.

 蜂ロウロウソクの美しい炎色を見つめる,おだやかで豊かな時間をあなたにも一度お楽しみいただきたいです.いつの時代であれ決して安価ではなかった蜂ロウですが,教会で,宮廷で,無数の部屋で,そのロウソクは欠かすことのできない貴重な必需品だったのでしょう.欧州の修道院や貴族の荘園で,蜂群の飼養が伝統的に行われていたのも頷けます.

 

 ロウソクの他にも蜂ロウは美術工芸から化粧品まで様々な用途に用いられてきました.次では,古代エジプトから今日までの蜂ロウの利用を見てみましょう.