花粉の栄養なしには II

花粉から得られるタンパク質は蜂群の生育に不可欠ですが,花粉が提供するタンパク質の量は種によって,花粉乾燥重の6%-30%と大きく差があります.タンパク質を構成するアミノ酸のうちトレオニンなど10種がミツバチに必須とわかっていますが,花粉中のアミノ酸量と種類もまた花の種類によって様々.どんな種類の花粉でもミツバチに同じだけの栄養を与えるわけではないのです.

 一方,働き蜂は花粉を集めるのに,栄養価ではなく,匂いや形状で選ぶことが知られ,標準的サイズの蜂群(約2万匹)は年間約57kgの花粉を集めます.外勤蜂の約15-30%が花粉を集め,1匹の蜂が巣に持ち帰る花粉重量は自分の体重の約35%にあたります.ミツバチは後ろ脚にある一般に「花粉篭」とよばれる専用の構造を使って,花粉を団子状にまとめて効率的に運びます.

 持ち帰った花粉団子には酵素と酸を含む分泌液を混ぜて腐敗を防止し,長期保存に耐える状態に調整します.こうして巣房内に貯蔵された花粉はしばしば「蜂パンbee bread」と呼ばれます.蜂パンの消費は比較的速く,余剰があるときでも数ヶ月以上蓄えることはありません.

 ミツバチが生育し蜂群が大きくなるために花粉は不可欠で,幼虫はワーカーゼリーと蜂パンを食べて育ちます.さなぎから成虫になりたての出蜂児は蜂パンをたべて体の成長を完成させます.働き蜂一匹の生育には約124-145mgの花粉が必要で,そのうち約30mgがタンパク質です.高タンパク花粉を食べる蜂群では働き蜂の寿命が延びますが,低タンパク花粉を食べる蜂群では蜂児の生育が抑制されます.

 大変重要なタンパク質含有量について多数の一般的植物の花粉成分をまとめた良書として ”Fat Bees Skinny Bees – a manual on honey bee nutrition for beekeepers” があります.オーストラリアの植物の花粉成分表ですが,同じ属の植物は花粉が含むタンパク質も類似していることを念頭に置いてこの表を参照すれば,自分の地域に生えている近縁植物の花粉のタンパク成分の目安となります.https//rirdc.infoservices.au/downloads/05-054 で入手可能です.