ミツバチからの贈り物- ハチミツ その5 ミツバチのはたらき

ミツバチはどんな花のみつが好きなのでしょう?基本的には糖度が高いほど,また巣から近いほどのぞましく,さらに一回にたくさん集められることや,ミツバチが蜜をあつめやすい構造の花が評価されます.ダンス情報でこれから飛んでいこうとする採餌先の距離を知ると,蜜胃の中に採餌先までの飛行に燃料として必要なだけのハチミツを入れて外勤蜂は巣から飛び出します.

 蜜胃の燃料がなくならないうちに無事に蜜源を見つければ,こんどはその中を甘い蜜でいっぱいにしようと吸蜜に励みます.蜜胃中ではα-グルコシダーゼという糖加水分解酵素の働きにより,花蜜中のショ糖がブドウ糖と果糖に変わり始めます.

 花蜜を持ち帰った外勤蜂は巣の中でこれを受け取ってくれる貯蜜係の内勤蜂を探します.その時のコロニーの需要にそった蜜を持ち帰れば,すぐにそれを受け取る蜂がいるので,再び同じ蜜源めざして採餌に出やすいのですが,たとえば他の蜂が別種の花からもっと甘い蜜をどんどん取ってきているときに,水っぽい蜜をもちかえっても,これを受け取ってくれる内勤蜂はなかなか現れません.となるとその蜜源に通う蜂は減っていくことになります.

 ミツバチの巣の中は温度が35℃,湿度は60~70%に保たれ,巣内に新鮮な空気を取り込む換気も行われています.蜂が飛び回らずに巣板上で翅だけを動かす扇風行動により,いつも空気の流れをつくっているのです.外勤蜂から口移しで花蜜を受け取った貯蜜係の蜂は,それをそのまま巣房にため込むのではなく,自分の口を使って巣内の乾いた空気に当て,水分を蒸発させ脱水濃縮をすすめます.またその蜜胃からα-グルコシダーゼを分泌して,ショ糖からブトウ糖と果糖への分解を進めます.

 巣板の上部が蜜を貯蔵する主な位置で,内勤蜂はここの巣房に少し濃度が高まった蜜をおきます.グルコースオキシダーゼという酵素を加えるとブドウ糖が殺菌力を持つグルコン酸と過酸化水素に変わり,ハチミツの保存性を高めます.たくさんの内勤蜂が貯蔵と濃縮作業をくりかえし水分含量が20%以下までさがると,ついにハチミツは完成です.この濃度にまでなると発酵がおきず品質が安定します.ミツバチはこの貯蜜巣房にロウでふたをします.