季節変化とミツバチコロニーの活動 2-冬

気温が14℃くらいに下がると,ミツバチはそれまでより密に集合し,蜂球を作ります.ミツバチが発する熱により,蜂球内部の巣板では蜂児(卵,幼虫,蛹)が34℃ほどに暖かく守られています.女王蜂の産卵は徐々に減り,10月か11月には,まだ巣板に花粉が蓄えられていても,完全に止まり女王蜂の体はほっそり.寒い冬はコロニーが蓄えと仲間をたよりに生き延びる厳しい我慢の時間です.一方,寒くならない亜熱帯,熱帯地域や冬も穏やかな気候の地域では,女王蜂の産卵と蜂児の生育が休みなく続きます.

 気温が下がると熱を逃がさないようにミツバチはさらに密集,蜂球の外側にびっしり並んで層を作り,内側の蜂を守ります.気温の上げ下げに対応して,蜂球はゆるやかに広がったり,ぎゅっと縮まったり変化,そして暖かいときは移動のチャンスです.蜂球全体が巣房にハチミツがためてあるべつの場所へと巣板上を動きます.蜂球の暖かさでそこのハチミツは温まり食べられるようになりますが,蜂球から離れた場所のハチミツは冷えすぎていて,使えないのです.ひどい寒さが長く続くと,すぐそばに貯蜜があっても蜂球がそこに移動するチャンスがないまま,蜂球内の巣板の暖かな蜜を食べ尽くし,飢え死にしてしまうこともあります.

 女王蜂は蜂球内にいて,移動時にも一緒に動きます.秋にハチミツと花粉を十分蓄えることができたコロニーは12月,1月頃に女王蜂にふたたび産卵を促す給餌を始めます.この時期の蜂児はやがて羽化し,越冬中に死ぬ蜂を補完して,働き始めます.早春の蜂群の貴重な戦力になる,越冬期の蜂児育成がどの程度行われるかは,前年の秋に集められた花粉の量できまるそうです.花粉不足だったコロニーでは,春の花が開花して,その花粉が持ち込まれる時期になってからやっと蜂児育成が再開されます.だからこのような群では越冬開けに蜂の数がぐっと減ってしまっているはず.春の建勢も遅れます.

 活動期より格段に長生きするとはいえ,越冬中にも老いた蜂は減っていきますから,蜂群サイズは小さくなります.けれど,秋にたくさんの若い蜂が生育し,越冬用のハチミツと花粉をたっぷり蓄えていたコロニーなら,蜂児育成が早くから始まり,越冬開けを多くの蜂で迎えられるでしょう.