タンパク質を消費するストレス

ミツバチのタンパク質要求量はストレスの強さにより変化します.蜂群にストレスがかかっているときに,必須アミノ酸をもれなく補えるように,良質の花粉などを給餌すれば,その先の蜂群縮小を予防できるので効果的です.蜂群にかかっているストレスを理解すれば養蜂家は必要な栄養管理ができるでしょう.

 ミツバチにやさしい,低ストレス状態:蜂群がおとなしく,一定の産卵は続いていて,採蜜すべき開花がほとんどない,しかし温暖な天候(20℃以上)で,不足するものはあまりない.こんな状態のときは粗タンパク質がやや少なめな12%-15%程度の花粉であっても,十分集められているならばミツバチの体タンパク質は増加し,蜂群が維持あるいは緩やかに増加します.6-8週間このような低ストレス状態が継続すれば,ミツバチは十分強い群に成長するでしょう.

 目に見える形で貯蜜量が増えなくても,あるいは蜂の数が急に増えなくても,低ストレス状態はその間にミツバチの体タンパク質を上昇させ,強健な群に育て上げているわけです.

 体力消耗,高ストレス状態:ミツバチが活発に活動し続ける高ストレス状態では体タンパク質が消耗していきます.消化可能粗タンパク質20%以上の花粉給餌が求められ,その効果は高いのです.高ストレス状態とはたとえば流蜜期で,流蜜が太いほどストレスは大きくなります.また春期や奨励給餌により蜂群が蜂児育成速度を高め,造巣して蜂児圏を拡大している時期.さらに暑すぎる(35℃以上),寒すぎる(20℃以下)厳しい気象下で,ミツバチが花蜜や花粉を求めて盛んに活動している状態もストレスフルで,体内のタンパク質が低下していきます.

 ビテロジェニンというタンパク質を腹部にたっぷり蓄えた状態と,それをほとんど使ってしまった状態の写真を見ました.ミツバチは見た目は太ったりやせたりしませんが,体内のタンパク質を育児や造巣,労働につぎ込んでしまった様子をみると,働き者のミツバチのけなげさにあらためて心が動かされます.