ミツバチの健康に必要な栄養 タンパク質

働き蜂が花粉を消化して体内に貯蔵していたタンパク質を,ふたたび分解して栄養豊富な濃厚な液をつくるのは,母牛が体細胞から子牛に飲ませるミルクを作るのによく似ています.

哺乳類以外で,こんな風にすぐれた食べ物を自ら造り出して,与え育てる生物はすくないでしょう.

 女王蜂が産卵し続け,蜂児や若い成蜂の筋肉増強にもタンパク質は必要で,そのタンパク質をミツバチは花粉から得ています.花粉からはタンパク質だけでなく,脂質,ビタミン類,ミネラル類,そのほかミツバチの生育と健康維持に必要な栄養を摂取できます.タンパク質を20%以上含む花粉がミツバチの役に立ちます.たぶん世界で最も多くの花粉分析研究が行われたオーストラリアには多様なユーカリの仲間がありますが,スポッテッド・ガムの花粉は25-33%ものタンパク質を含むので,蜂群建勢にとても適していると判定されています.一方,風媒花であるマツの花粉には5-7%しかタンパク質が含まれず,ミツバチにとっては栄養価の低い食糧なのです.

 体内のタンパク質量が多いほど,ミツバチは強健になり,寿命がのびます.ご存じでしたか?ミツバチは体内に60%以上もの体タンパク質を取り込めて,そのような状態(太った働き蜂)ならば免疫力が高まるので,元気に活動して長生きし,結果的に多量のハチミツを作り出せるそうです.反対に環境の状況が厳しく,新鮮な花粉を外から十分に持ち込めないときには,体タンパク質を30%以下までへらして,そのタンパク質でローヤルゼリーやワーカーゼリーを作り続けますが,そうなる(やせた働き蜂)と免疫力が低下し,短命でヨーロッパ腐蛆病やノゼマ病を発症しがちになり,ハチミツ生産量は減少します.

 ミツバチの減少が一つの原因によることのように騒がれたりしますが,越冬率が低下したり,春の建勢が思うように行かない,以前より病気にかかりがちなどの現象は,蜂群は栄養豊かな多様な花粉を十分集められなくなっている,栄養不足のやせっぽちになってしまうような,ミツバチをとりかこむ自然環境の変化,劣化に根本原因があると,各国の調査研究から見解が集約されてきています.

 だから不足しているタンパク質を,アミノ酸を蜂群に花粉などのかたちで給餌しなければ.糖分だけでは不十分です.