ハチミツを傷口に その3 創傷への適用

 ハチミツは古くから,ヨーロッパ,エジプト,インド,中国と世界中で伝統的な医薬として使われてきました.私は2001年にイギリス IBRAから出版された Honey and Healing の日本語版「ハチミツと代替医療」にかかわったので,世界各地で進められていたハチミツの医学的臨床研究を知りました.

 マヌカハニーだけでなく,やけどやなおりにくい潰瘍の治療,ハリナシバチハチミツで白内障治療など,大変興味深い内容ばかりでした.

 「ハチミツと代替医療」執筆者のひとりでもある,カーディフメトロポリタン大学の Rose Cooper 教授がマヌカハニーの創傷治療薬としての働きについて総論を書いています.

 https://uk.advancismedical.com/uploads/files/documents/resources/UK/Cooper-Gray.pdf

 いまも創傷治療のためのハチミツ利用が注目されています.ハチミツが複雑な創傷を効果的に治癒させるとの科学的裏付けが多くの研究で示されました.潰瘍などの複雑な傷では細菌が大暴れし,通常の手法ではいつまでも直りにくいことがあるからです.このような傷では複数種の細菌がバイオフィルムと呼ばれる,自ら生成した粘液基盤中に混在しており,これに対しては強力な局所的に効果を上げる抗生物質の投与が不可欠なのです.研究者等はハチミツこそがその対策に最適な選択肢のひとつであるとの結果を得てきています.

 「大部分の抗生物質は創傷の治癒速度を遅くしますし,傷口の細胞にダメージを与えます.ところがハチミツでは,殺菌を行いつつ,傷口をケロイドにすることなく,元の状態への治癒を進めていくのです」と,カーター博士は述べました.

 私は10年ほど前に指を熱湯でやけどをしました.流水で十分に冷却したあと,手元のハチミツを塗って,ガーゼと油紙でカバーしてみました.ハチミツでホンワリ包まれると痛みがありません.数日そのままで良いのですが,だんだんハチミツがしみ出して汚れが目立つので,ガーゼ交換をします.水ぶくれのあとはとても生き生きとしていて,みずみずしく,乾いてぴりぴり痛くなど,全くなりません.やがて治癒すると本に書いてあったとおり,元の指の皮膚がそっくり再現され色素沈着もなく,完璧でした.ハチミツのやけどへの利用方法を知っていて本当に恵まれました.