蜂ロウ製のロウソク その2

蜂ロウ製のロウソクは古代エジプト,古代ギリシャ・ローマ,中国の東晋時代に使われた記録があります.もちろん記録に残らないもっと以前の時代にもあちこちで燃やされていたはずです.しかし蜂ロウは高価で貴重な素材だったので,だれもがこのロウソクを潤沢に使うわけにはいきませんでした.

高温で美しく燃える明るい炎は,特別の日に,特別の場所でみつめた人々の希望の光だったのでしょう.

 古代エジプトで蜂ロウが多様に利用されたことが,記録に残ることからもわかるように,蜂ロウは,他の天然物では手に入れられない,卓越した特徴をもつ貴重な素材でした.たとえばロストワックスキャスティングにより金属で武器や防具を大量に鋳造することが出来ました.まず蜂ロウで原型をつくり,そのまわりを粘土で覆い固めた後に,加温して溶けたロウを中から除去し,粘土の鋳型を作りました.内部の空洞に金属を流し込むと精度が高く美しい肌の鋳物ができます.権力者が蜂ロウを献納させ,また税として集めた記録は古代・中世に多くあるそうです.

 キリスト教ではごく初期からかがり火やランプを使いましたが,紀元4世紀にローマ帝国の国教となったころ,ローマ教会はミツバチと蜂ロウをシンボルとしてとり上げ,礼拝では蜂ロウ製ロウソクだけを用いるように求めたとのことです.現代でもクリスマスとロウソクは切り離せません.暗く寒くて厳しい季節に訪れる光の祭典です.キリストの降誕を待ち臨む4週間のアドベント(待降節)の間,希望,平和,喜び,愛を意味する4本のロウソクを常緑樹の枝でつくったリースや燭台にかざり,週を追うごとに点火する数を増やしていきます.

 ユダヤ教にも冬に祝われる光りの祭り,ハヌカがあり,ここでもロウソクが重要な役割を演じています.写真は以前私が3月のマンハッタンで,セールになっていたのを見つけておもわず買った,ハヌカのプレゼント用包み紙です.このお祝いのために特別使われるハヌキアと呼ばれる,8枝(実際は9本立て)の燭台が描かれていますね.