施設園芸の花粉交配 イチゴ その2

 2015年イチゴ生産高は全国で158,700トン.都道府県別では栃木県24,800トン,福岡県16,000トン,熊本県10,900トンがトップ3です.

 最近,イチゴは冬の果物として扱われ,本来の季節(5~6月)が忘れられがちですが,11月から出荷されるようになったのは,ミツバチが温室内で花粉交配を助ける現在の生産技術が開発された成果です.

 イチゴはバラ科の多年草で,春に株から花枝が伸びて白い五弁の花をつけ,初夏の頃に花床が赤く肥大し,表面に種子を多くつけた果実をつけるものです.昭和40年代前半に休眠打破技術が開発され,2月に出荷できるようになりましたが,奇形果や不受精果が大きな問題として浮上してきました.イチゴのツブツブひとつひとつがタネです.ミツバチがいない,あるいは少ないと,受粉できなかった花にタネができず,その部分はホルモンが出ないので,果実の発達がわるくなって奇形果になります.

 昭和40年半ばに,ミツバチが働くハウスでは上質な実が多くできることが知られて,施設への花粉交配用ミツバチの導入がすすみ,状況は一気に改善されました.福岡県の調査(S46年)ではミツバチのいるハウスのイチゴは正常果が蜂なしハウスの2倍に増え,奇形果は1/3,不受精果は半分に減りました.栽培の手間がへり,イチゴの成熟日数は短縮,生産性が高まり,栽培面積がふえました.今日ではクリスマスにも十分間に合う出荷態勢がととのい,真っ赤で大きなイチゴがデコレーションケーキを飾ります.

ミツバチはイチゴを通じて栽培農家を大いに助けました.イチゴ栽培農家も養蜂家からミツバチを借りること,ポリネーション用小群を買うことにお金を払うのはあたりまえと思うようになってきました.