分蜂シーズンの到来 その2

 新たに出房した若い女王蜂は交尾飛行から戻り,産卵を開始すると巣内にとどまります.ローヤルゼリーを十分に与えられ,大きな腹部から産卵の日々.ローヤルゼリーは完全に消化されるので,糞をするために巣の外に飛び出ることもないのです.ところが分蜂準備が始まると,働き蜂から女王蜂へのローヤルゼリー給餌が控えられるようになり,女王蜂は腹部がほっそりとなります.

 写真右上の女王蜂,腹部は普段これほど大きくなっています.

 それでふたたび飛びまわれるようになるわけですが,やはり不慣れです.新しい巣で産卵するのはこの女王蜂だけですから,これまでの巣を後にして飛び立った分蜂群は,移動中に外界に不慣れな女王蜂を失わないよう,女王蜂と共に仮の集合地にまとまり,探索蜂が探してくる新たな営巣候補地の情報を待ちます. T.D.シーリー著「ミツバチの会議」で,最良の意思決定にむけてのミツバチのすばらしい行動の詳細をどうぞ.

 蜂はお腹に蜜をたっぷりつめこんで出てくるので,分蜂行動中の蜂群は基本的にとても穏やかです.働き蜂がこのとき運ぶハチミツは,新しい巣で巣板を作り,コロニー維持に必要な花蜜,花粉をゼロから集めるために飛び回るエネルギーの唯一の源.それを無駄に減らす行動は避けて,おとなしく固まっています.外敵から守るべき巣はもなく,最良の営巣場所をえらび,速やかにそちらに行こうとしているだけ.蜂好きのどなたかがちょっと期待して,ミツバチが好みそうな場所に置いておいた空き巣箱など,魅力的な営巣場所がやがて群れの総意で選ばれ,喜び勇んで皆でそちらに移動して行くはずです. 

 しかし仮の集合状態が人目について騒ぎの元になることがあります.このときにあわてて蜂群をどかそうと水をかけたり,枝をたたくなど,不用意に手を出すと蜂を刺激してかえって危険です.人の背丈よりだいぶ高い場所などなら,見守るだけで大丈夫.不安な方は都道府県の畜産担当部署にご相談下さい.