春になったら蜂が増えて

「私の蜂場周辺にはアブラナ畑があり,いつ開花するか,その成長を注意深く見守っています.それで,私の蜂群に上置き巣箱を追加するのは,いつ頃がベストでしょうか」.この質問をした方はたとえば,「菜の花が5分咲きになった頃に,2段群にするのが良いでしょう」という分かりやすい返事を期待したのでしょうか. 

 「経験豊富な養蜂家3名に同じ質問をしてごらんなさい.6通りの答えをもらうことになりますよ」.これ,APIMONDIA 国際養蜂会議のように,北半球から南半球まで,あらゆる地域の養蜂家,ミツバチ研究者などが楽しく,でも密かに真剣な情報交換をする場でだれもが実感する,養蜂界で有名なジョークです.養蜂家の巣箱にいる蜂群は家畜ですが,実際には半家畜で,巣門から自分たちの判断で外界に飛び出していきます.養蜂家は巣箱の内検で女王蜂の産卵状況など,巣の状態を注意深く観察するしかありません. 

 当初の質問にベテラン養蜂家が答えています: この群に上置き巣箱が必要か否か,もし置くとすればいつやるのか.それは蜂群の建勢具合をみて,また,たとえばアブラナのような,この時期に期待できる蜜源,花粉源植物の今年の開花時期を考え合わせて,総合的に判断するしかない. 2段群にすれば,巣箱の天井はそれまでよりずうっと高い場所になり,蜂児圏で必要な暖かな空気が上部に逃げてしまう.蜂がまだ十分ふえていない群では,上置き巣箱の追加が早すぎると,蜂児の生育が滞り,建勢も遅れる危険あり.一方その逆の場合で,建勢が順調なのに,いつまでも1段群のままでおかれるとどうなるか.本来蜂児圏として使われるべきところにまで,多数の外勤蜂がさかんに採餌してくる花蜜が貯められ,女王が産卵すべき巣房が減ってしまう.

 さらに具体的な養蜂技術のアドバイスが続きますが,ここでは割愛させていただきます.春の花が色々咲いて,蜂が盛んに出入りして,この群は調子がいいなあと思っていたら,急に蜂の数ががっくり減っている.えっ,どうしてと慌てること,多いらしいです.私もそんなお嘆きを何回か耳にしました.原因は蜂児用巣房の不足だったのですね.

 質問に答えたベテラン養蜂家は末尾に: 年により違うこと,コロニーごとに違うことが多々あり,わからないことだらけだ.けれど,少しずつ直感的に判断できる面もでてくるので,謙虚にミツバチをみつめている.今年はアブラナの生育が昨年より良いと聞いている.養蜂家には朗報だろう.

Bee Craft 20018年4月号より