ミツバチヘギイタダニは強力な害敵

ミツバチヘギイタダニ(バロアダニVarroa destructor (Anderson and Truman))は ミツバチ成蜂と幼虫の体外に寄生するダニです.過去数世紀にわたり世界のミツバチの最も手ごわい害敵であり,生来の対抗手段をもたないセイヨウミツバチはとくに深刻な被害を被っています.その寄生数が上昇すると,ミツバチコロニーはバロア病と呼ばれる一連の症状を発症し,的確な対策がなされないと,この蜂群は2~3年のうちに死滅するでしょう.

 ミツバチヘギイタダニの生活環: このダニはつねにミツバチコロニーの中で生きています.巣箱内やミツバチにとりついているのを目視できるのは雌ダニで,大きさは約1.6x1.1mm,赤茶色のうすべったいカニのような楕円形の体です.巣房内の幼虫の生育がすすみ,蛹化するため蓋を掛けてくれるようにフェロモンを出すのを察知して,雌ダニはその巣房に侵入し,巣房底部にある幼虫の餌に潜り込んで姿を隠します.そのまま2-3日待ち,有蓋巣房内で幼虫が餌を食べ尽くすと,ダニは産卵を開始,まず雄の卵を,それ以降は数個の雌の卵を産み,このうちの2-3個が成虫にまで育ちます.

 蓋をされて,衛生管理に熱心な育児蜂の目が届かない巣房内で,ダニは蜂の幼虫,蛹の体液を吸って成長.また蜂児に多様なウイルスを感染させて,蛹の発達を阻害し,その寿命を縮めます.21日後,成蜂となった働き蜂は出房しますが,このとき多くのダニは成熟が間に合わず,蜂が出房するためにそのあと死ぬことになります.それ故に出房までの時間が長い雄蜂(24日後)がダニには都合良く,働き蜂巣房の10倍の数のダニが雄峰巣房で見られるそうです.

 ダニは成蜂の背中にとりついたまま,あらたな蜂児巣房に侵入する機会をうかがいます.ダニはこの様な生活環により4週間で2倍にまで増殖するたけでなく,盗蜂するミツバチにとり着いて他の巣箱に移動したり,吹き飛ばされて,あるいは分蜂群と共に新居へ移動などにより,感染域をひろげていきます.