施設園芸の花粉交配 イチゴ その1

 昆虫が訪花し,花粉を運ぶことにより受粉が行われ,植物に実がなります.世界の食糧生産の9割をしめる作物100種のうち,70種がハナバチ類や他の昆虫の送粉サービスに助けられており,全世界で昆虫による花粉交配が寄与する経済価値は1500億ユーロに上ると推計されています.ミツバチは農業に関わる昆虫の代表.勤勉な送粉者として世界の食料安全保障(food security)に大きく貢献しているわけですね.

 ミツバチや野生のハチ類の助けがなければ,たとえばリンゴなど多くの顕花植物は,ほとんど結実できない,あるいはごくわずかな実しか実らせることができません.日本のイチゴはハウスや温室でつくられるものが大部分ですが,そのような施設園芸では全国で約4.7万群のミツバチが花粉交配に活躍しています.ミツバチの手を借りないと,実がならなかったり,奇形果になってしまうのです.

 イチゴだけでなく,ハウス栽培でつくられるメロン(2.5万群),スイカ(1.7万群)などのウリ科植物もミツバチが得意な果実です.

 1985年に国際養蜂会議(アピモンディア)が名古屋で開催されたときには,養蜂産業がはちみつ,ローヤルゼリーなどの生産により,重要な栄養素の供給源として国民の健康に寄与しているだけでなく,花粉交配による果樹,牧草などの農産物の増産にもおおきく貢献していることを認め,イチゴで働くミツバチを図柄とした記念切手が発行されました.