米国でも退役軍人とミツバチのプロジェクト

つぎは米国養蜂雑誌Bee Culture のニュースレターCatch the Buzz で10月に紹介された,同じく退役軍人とミツバチとを結びつけた「ブーツがビーを」プロジェクトです.世界の紛争地で戦い帰郷した帰還兵は英国同様にこちらでも苦しんでいますが,ウエストバージニア(WV)州オハイオバレーでは,自然環境保全と食糧生産に不可欠な花粉媒介者ミツバチとの互助活動が始まりました.

 ウエストバージニア(WV)州はアパラチア山脈の山地が主で,大規模農業や工業が少なく,人口減少.暮らしはきびしいものがあり地域に住む元兵士の2割は職がありません.PTSDや他の精神障害のために自殺率が高まり,年間8千件以上とのことです.一方米国のミツバチもダニ,薬剤,採餌先喪失などで苦しんでおり,食糧生産に必要な昆虫への関心と不足する養蜂資源,営巣場所を増やそうとの対応策が各地で始まっています.

 「ブーツがビーを」 プロジェクトは帰還兵に職を与えよう,つまり健康な蜂群を維持管理とその生産物の販売という仕事を担ってもらうことをめざします.ミツバチがひどい目にあっていると聞いて,自宅の裏庭に巣箱を置くのもわるくないとあなたは考えませんか.けれど養蜂の技術はないし,自分で世話をするのも面倒だというなら,このプログラムに参加する元兵士たちの出番です.

 「ブーツがビーを世話します.つまり新たにミツバチ巣箱を自宅においた方の養蜂作業を帰還兵が担えば,彼らは持ち主に代わってミツバチの飼養をするという仕事を得られ,ミツバチは良い環境をあたえられ勢いよく健康に暮らせて,両者に利益があります.「ブーツがビーを」プロジェクトはユタ州とWV州オハイオバレーで同時に開始されます.この地域にお住いで求職中の復員軍人の方や所有地に巣箱を置きたいと望む方はご連絡ください.すべてのお宅の庭にミツバチ巣箱をと願っています」とプロジェクト関係者が語っていました.

 ウェールズのリチャード・ジョーンズさんの話にもありましたが,ミツバチの扱いでは集中力や丁寧な作業がもとめられます.天候や気温を考えず,乱暴に巣箱をいじっていれば,中のミツバチは荒くなり,しつこく刺そうとしてきます.

 良い戦争などどこにもありません.英国.米国の復員軍人の方たちが戦争のトラウマを,油断できないが働き者で仲間を大切にする小さな昆虫を相手に克服しつつ,環境から恵みを受け,また自然の営みに貢献する養蜂の技術を習得して,ご自身の経済的自立と社会復帰に結び付けていただきたいと思いました.