自然と養蜂 -その3-

ただ,前述の「自然な」という言葉の食品規格策定で懸念されるのと同様に,「自然養蜂」をうたうときに従来の一般的な養蜂手順との違いを強調して,可動巣枠式巣箱はつかわない,ミツバチに彼らが望む巣房サイズで巣板を自作させるなど,その方法がやや極端になりがちです.一般的な養蜂手順は自然な養蜂ではないのでしょうか?

ビーズ・フォア・ディベロップメント(BfD)のニコラ・ブラッドベア博士は次のように述べています.

「どのような形の巣箱に蜂群を入れるのか,ということは自然養蜂の主眼点ではない.使う巣箱が何であれ,ミツバチが可能な限り自然状態に近く暮らせるように飼うことは可能である.例えばBfD誌の養蜂適正規範連載記事でW・リッター博士が述べるように,蜂群がもつ衛生管理能力をミツバチの健康維持に大いに役立てることができる.博士は一般的な巣枠式巣箱の養蜂を対象としているのだ.

 私が勧めるのはむしろ巣箱の出入り口で定期的に観察を続けることだ.そうすれば,その群の健康状態や発展状況を理解,認識できるので,あなたの管理はミツバチの必要に即した介入となるだろう.介入は最小限にとどめ,次の3つのゆるやかな原則に従ってほしい.

 みつばち由来でないものは何も巣箱内に持ち込まない

 みつばちが失えば打撃を受けるものは巣箱から持ち出さない

 ミツバチに相談し,導かれよう

 ミツバチに導かれるためには,その行動とかれらが必要としているものへの理解が必要であり,これはミツバチをよく観察することで習得でき,また経験豊かな養蜂家に話しかけて学習できるものなのである.」

 勉強好きな日本の養蜂家ですが,新たに興味を持った人のための養蜂指導書や養蜂講習の機会は極めて限定されてきました.ミツバチに相談し,導かれる養蜂家となるための途がひろがることを願います.