自然と養蜂 -その2-

養蜂は亜寒帯から熱帯まで世界の様々な気候のもとでおこなわれています.どれほど草や樹木が開花して甘い蜜を出していても,人間の手でそれを大量に集めて甘みを味わうことはできません.けれども何百万年も地球に生息し,環境の変化にも適応して進化してきたミツバチの知恵と力を借りれば,地域の自然が生み出した貴重な資源を,滋養豊富なハチミツとして人間が活用できるようになるからです.

養蜂は社会性昆虫である野生のミツバチが自分たちの群を大きくして分蜂・繁栄するために,また多くの仲間とともに無事に越冬し生きのびるために,巣板に花粉と蜜を大量に蓄える生態を,人間の都合に合わせて調整・活用する技術です.人に飼養される蜂群であっても,ミツバチは巣箱から自由に飛び出して花蜜,花粉を提供してくれる植物を自分で探し,巣に持ち帰ります.自然環境の中で自主的にとびまわる部分は野生群の行動と同じなわけで,一般的な家畜とはちがう半家畜的状態といえます.

養蜂は「自然」と本質的に深くかかわっています.近年欧米で「自然養蜂」や「有機養蜂」について多数の本が出版されました.自然養蜂とは人が飼養する蜂群が,自然の中で暮らす野生の群と同じような状態でいられるように考える養蜂形態であり,開発によるミツバチの生息適地の減少や,経済効率を優先しミツバチに負荷をかけ過ぎる養蜂などで,ミツバチの健康が懸念されていることから改めて提唱されたものです.変化する地球環境の中でミツバチが生き延び繁栄するために,何百万年もかけて進化させてきた彼ら自身のシステムを,十分に利用できるようにとの配慮といえるでしょう.