自然と養蜂 -その1-

アメリカの養蜂雑誌Bee Culture に興味深い記事がありました.合衆国の消費者の三分の一が,製品にラベルされる「自然な」とか「有機栽培の」といったことばが何を意味しているのか,その具体的な中身がよくわかっておらず,また/同時に 政府が規定するその基準の違いなどを知らないという,ある調査結果の報告です.

これは「自然な/natural」という言葉の使用についての標準規格策定をめざす,有機&自然健康協会(Organic &Natural Health Assoc.)が1000人の消費者を対象に実施したオンライン調査の結果で,「自然な」という用語の使用に混乱がみられることがわかりました.たとえば,ビタミン剤は自然素材からつくられている,あるいは「自然な」と表示してあるものはすべて,殺虫剤無使用生産なのだといった誤解です.調査対象の消費者の3/4は有機食品なら合成添加成分は5%以下だとおもい,同じく2/3は「自然な」食品も同様の基準が期待できると考えていました.約半数のひとは「自然な」と表示されていたら,その食材は合成殺虫剤を使用せずに育てられ,遺伝子組み換え食品でもないと考える,つまり「有機」生産物の特徴をそのままイメージしていたのです.

「自然な」という表現はすでに政府がさだめた品質表示だと半数弱の人が誤解していて,そのイメージは実は「有機」食品の規格でした.「有機」分野の方たちはもっと消費者に対して働きかけ啓蒙する必要がありそうですが同時に,ハチミツなど「自然な」生産物分野の関係者もその特徴を明確にアピールしていかないと,しだいにあいまいなイメージに埋没しかねません.

ハチミツやローヤルゼリーなどのミツバチ生産物はミツバチがその巣の中で作るもので,人の手が加わるまえに完ぺきに仕上がっているまさに「自然な」産物です.けれども「自然な」食品の規格策定をめざすとき,消費者にわかりやすくするため“天然成分が95%以上”などの数値が先行しがちです.それがたとえばEUのハチミツ基準で,ハチミツ中の花粉が自然な成分でなく,排除すべき夾雑物とみなされそうになった時のように,世界の養蜂業界に大きな影響をおよぼすこともあり,それでこんな記事が養蜂雑誌にでたのでしょう.