ミツバチで多様な学びの機会を

100年以上前から,子供らが自分たちで責任を持って動物を飼育することが,日本の教育現場で積極的に奨励されてきました.でもミツバチ巣箱がある学校や,養蜂家の蜂場を訪ねる体験教室のような機会は,欧米に比べ日本はかなり少ないようです.なぜでしょう.写真は英国養蜂協会が制作した,ミツバチと親しむ授業のための資料.Bees in the Curriculumです.

 生き物の「飼育」からは「命の大切さや尊さを感じること」,「思いやりや優しさを持つようになること」,「生物の生態や多様性を知ること」などを経験することが期待されます.昆虫は多くの子どもに身近な生き物ですがペットではなく,犬や猫と一緒に転げまわるようなコミュニケーションはできません.注意深い観察やていねいな扱いが求められ,だからこそ昆虫飼育をつうじて,科学的なものの見方をはぐくむことが可能です.
 幼児の絵本から小学校の学級文庫,学習図鑑まで,ミツバチをすばらしい写真やイラストとともに紹介する本や,ミツバチが登場するお話が出版されています.特殊なテレビカメラで,人の目に触れにくい決定的瞬間をとらえたテレビ番組もありました. 養蜂はミツバチと花と人が織りなす壮大なドラマ,知れば知るほど多くの人を魅了するのも当然です.蜂群を飼っている方なら,興味を持った人から見せてほしいと頼まれた経験をきっとおもちでしょう.ミツバチを研究する大学には幼稚園・保育園から高等学校まで多数の見学依頼がきます.
 多数の蜂が一つのコロニーとして働き,その状況は日々変化する巣箱周囲の環境や天候気象につよく影響されます.ミツバチの行動は予測が難しく,蜂群は専門技術と経験を持つ指導者による年間管理が必要です.写真でご紹介したイギリスでは養蜂協会を中心に,学校に蜂群を置いたり,ミツバチに親しみ学ぶための訪問授業向け詳細なガイダンスが科学的,技術的支援の下に作られています.地域の養蜂協会から経験豊富な養蜂指導者が教室に来てくれます.子供用の防護服だってすぐ手に入ります.