自然養蜂と巣箱

2010年に英国で蜂群越冬率が数年続して悪く,農作物の花粉媒介に必要な蜂が不足,養蜂家は議会にデモ行進して窮状をアピール.これを契機に「ミツバチを救え」を合言葉に,多様な組織による支援活動が開始.そのなかに,現在のハチミツ生産とポリネーション主眼の集約的な養蜂ではなく,もっと自然な,粗放的な養蜂でミツバチの健康を回復させようと主張する人たちがいました.

ミツバチが自然環境の中で野生群として暮らす状況となるべく似た環境で飼養するという趣旨で,養蜂家は巣礎や巣枠で規制せずに,ミツバチが造りたいように巣板を造らせよう.ミツバチが分蜂するのは自然に任せよう.たびたび巣箱の蓋をあけて,巣板を動かす,入れ替えるなどの操作はミツバチにストレスを与えているので控えようと提唱.商業養蜂で一般的に使われる可動巣枠式巣箱ではなく,よりシンプルな,自然巣に近い形でミツバチを持続的に飼うことを奨励しました.その一つは19世紀生まれのフランス人司祭が開発し,近年は忘れ去られていたウォレ式みんなの巣箱の再発見で,これはおもしろいことにニホンミツバチの重箱型巣箱にとてもよく似ています.

もう一つがトップバー巣箱による飼養です.ケニヤトップバー巣箱はアフリカなどの途上国で,伝統的な横置き丸太巣箱の改良型として開発されました.四角い巣枠のかわりに,製材した桟を巣箱内の上部に渡し並べて,そこから巣板をミツバチに作らせます.構造が単純なので工作器具や木材が限られる場所でも制作が比較的容易,巣礎が入手できなくても管理ができて, 蜂を殺さずにハチミツを収穫できる,巣は毎回ミツバチがゼロからつくるので,ハチミツを収穫した後の巣はロウとして販売できるなどのメリットがあります.しかし複数の上桟にまたがって造巣してしまうと,かなり厄介なことに.

写真はネパールの伝統養蜂で使われていた巣箱を,巣板一枚ずつ取り外せるトップバー式に改良ものです.